法制審議会 民法(親子法制)部会 第16回(令和3年5月18日)

会議日

目次

開催概要

  • 開催日:令和3年5月18日
  • 議題
  • パブリック・コメントを踏まえた今後の議論の方向性
  • 部会長:大村敦志(学習院大学法科大学院教授)
  • 開催形式:法務省大会議室及びWeb会議方式による開催

第16回のポイント

第16回会議では、中間試案に対するパブリックコメント(134件)の結果を踏まえ、要綱案の取りまとめに向けた具体的な議論が始まりました。まず懲戒権規定の見直しを中心に、寄せられた意見を踏まえた修正案について審議が行われました。

特に、「体罰」だけでなく精神的苦痛を与える行為まで禁止対象を広げるべきか、また「子の人格」と「子の権利」のどちらを民法上の理念として位置付けるべきかが大きな論点となり、多くの委員が意見を述べました。

主な論点

  • パブリックコメント結果の概要
  • 懲戒権規定の見直し
  • 精神的苦痛を与える行為の位置付け
  • 「体罰」と「児童虐待」の整理
  • 「子の人格」と「子の権利」の規定方法
  • 民法におけるメッセージ性と法的効果

主な委員の発言

発言見出しは人物ページへリンクしています。要旨は短い整理です。全文は一次資料(議事録PDF)を参照してください。

この回の発言者(人物)

大石眞委員

所属・肩書

京都大学名誉教授

発言要旨

精神的苦痛を与える行為まで禁止対象を拡大する方向には賛成であるとした上で、「体罰又は児童虐待」という表現には問題があると指摘しました。

児童虐待防止法では「児童虐待」が親権者による行為として既に定義されているため、民法でそのまま用いると条文構造として不自然になる可能性があると説明し、「体罰又は虐待」といった表現の方が適切ではないかと提案しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 精神的苦痛を含めた禁止に賛成
  • 「児童虐待」の用語使用には慎重
  • 条文技術上の整合性を重視

磯谷文明委員

所属・肩書

弁護士(東京弁護士会所属)

発言要旨

民法に体罰禁止規定を設ける目的は、行政による介入基準を定めることではなく、親に対する行動規範や社会へのメッセージを示すことにあると述べました。

そのため、「児童虐待」という用語を用いても、多くの親は自分の行為を虐待とは認識していないため、十分なメッセージ性は期待できないと指摘しました。

また、精神的苦痛を与える行為も禁止対象へ含めるべきとの方向性には賛成しつつ、「児童虐待防止法」の概念をそのまま民法へ導入することには反対しました。さらに、「子の人格」を「子の権利」へ置き換えることについても、概念が広く曖昧であるとして慎重な姿勢を示しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 精神的苦痛を含めた禁止を支持
  • 「児童虐待」の用語使用に反対
  • メッセージ性を重視
  • 「子の人格」の維持を支持

棚村政行委員

所属・肩書

早稲田大学教授

発言要旨

海外法制では、暴力やハラスメントの禁止は「人格」や「尊厳」の保護を理念として構成されている例が多いことを紹介しました。

その上で、民法改正でも体罰だけでなく人格や尊厳を損なう行為全体を視野に入れた表現を検討すべきであり、「児童虐待」という既存概念を借用するよりも、改正の理念が伝わる独自の規定を設けることが望ましいと述べました。

また、「子の人格」だけでなく「子の権利」の保障という視点も民法へ取り入れることを検討すべきとの考えを示しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 精神的苦痛を含めた禁止を支持
  • 人格・尊厳を重視
  • 「子の権利」の明文化にも前向き
  • 海外法制を参考とする立場

山本敬三委員

所属・肩書

京都大学大学院法学研究科教授

発言要旨

精神的苦痛を与える行為についても禁止対象へ含める方向には賛成であり、体罰だけではなく子どもの心身に有害な影響を及ぼす行為全体を対象として整理することが望ましいとの考えを示しました。

また、「子の人格」と「子の権利」は置き換えられる概念ではなく、人格の尊重と権利の保障はそれぞれ異なる意味を持つことから、両者の関係を整理した上で規定すべきであると述べました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 精神的苦痛を含めた禁止を支持
  • 「人格」と「権利」の整理を重視
  • 権利保障の視点を重視

久保野恵美子幹事

所属・肩書

東北大学大学院法学研究科教授

発言要旨

児童虐待防止法における「児童虐待」概念は、行政介入の基準として形成されたものであり、そのまま民法へ導入することは適切ではないと指摘しました。

また、親が行う行為そのものだけではなく、子どもにどのような害悪が生じるかという結果の側面からも禁止行為を検討する必要があると述べました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 「児童虐待」の用語使用に慎重
  • 子どもの被害結果を重視
  • 民法独自の規定を支持

窪田充見委員

所属・肩書

神戸大学大学院法学研究科教授

発言要旨

懲戒権規定において問題となるのは、「監護・教育」の名目で正当化され得る行為の限界を明確にすることであり、児童虐待全般を列挙することではないと指摘しました。

そのため、「児童虐待」という広い概念ではなく、監護・教育との関係で許されない精神的・身体的苦痛を与える行為を適切に表現する条文を検討すべきであると述べました。

また、「子の権利」は内容が明確でないまま規定すると解釈上の混乱を招くおそれがあるとして、「子の人格」を基本とする考えを示しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 民法独自の禁止規定を支持
  • 「児童虐待」の導入に反対
  • 「子の人格」の維持を支持

石綿はる美幹事

所属・肩書

法務省関係幹事

発言要旨

精神的苦痛を与える行為を禁止対象へ含める方向には賛成である一方、「児童虐待」という用語の使用は避けた方がよいとの考えを示しました。

また、「懲戒」という語を再び用いるのではなく、「言動」など別の表現を工夫する余地があると述べました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 精神的苦痛を含めた禁止を支持
  • 用語の明確化を重視
  • 条文表現の工夫を提案

第16回前編の特徴

第16回前編では、中間試案に対するパブリックコメントを踏まえ、制度の基本的な方向性よりも、要綱案へ落とし込む際の条文表現が中心的なテーマとなりました。特に、「体罰」の範囲を精神的苦痛まで広げることについては多くの委員が賛成した一方、「児童虐待」という既存概念をそのまま用いることには慎重な意見が相次ぎました。

また、「子の人格」と「子の権利」の位置付けについても議論が深まり、子どもの利益を重視するという方向性では一致しつつも、その理念を民法上どのような文言で表現するかについては引き続き検討が必要であることが確認されました。後半では、嫡出否認制度及び認知制度の見直しに関する議論へ移りました。

sourcesから追記した発言

運営の評価ラベルは付けません。

佐藤隆幸幹事

所属・肩書

法務省民事局参事官

発言要旨

それでは,最初に,パブリック・コメントの結果の概要につきまして御説明させていただきます。ここでは,結果の概要のみ御説明することとしまして,より詳細な意見の分布,あるいは内容につきましては,個々の部会資料の中で各論点ごとに御報告をさせていただこうと思っております。

(PDF p.3)

中田裕康委員

所属・肩書

早稲田大学大学院法務研究科教授

発言要旨

ただいまの家事事件手続法の見直しの中で,訴訟記録についての御説明がありましたが,訴訟記録に含まれているかどうかというのは,そのケースによって違い得るのかなとも思います。そうすると,偶然的なことで決めるというのはやや不安定ではないかという印象を抱きました。

(PDF p.19)

大森啓子幹事

所属・肩書

弁護士(第二東京弁護士会所属)

発言要旨

大森です。ありがとうございます。前夫の否認権の要件について様々御意見が出ているところですが,私は前夫の否認権を認めるのかということ自体についても,パブリック・コメントの結果を踏まえて検討する必要があるのではないかと思い,そのことについて発言させていただきます。

(PDF p.22)

大村敦志部会長

所属・肩書

学習院大学法科大学院教授

発言要旨

ありがとうございました。4-1についての指摘ですけれども,前提になっている前夫の否認権自体についてはどう考えるのかと,それについて考えるに当たっては,今御指摘を頂いたその前の問題です。嫡出否認の効果の方の問題と連動するので,そちらも併せて考える必要があるのではないか,先ほど幡野幹事から,(3)についてはパブリック・コメントの意見について慎重に評価する必要があるという御意見がありましたが,(4)についても同様に,どういう前提に立っているのかということを見極めた上で評価する必要があるのではないかということを含んだ御指摘かと思いました。

(PDF p.23)

髙橋良委員

所属・肩書

弁護士(神奈川県弁護士会所属)

発言要旨

ありがとうございます。まず,母親の否認権の特則とありますけれども,これは母の否認権を認めるかどうかの議論がまず先にあって,認めた場合には母の否認権の特則を置く必要があると,そういう趣旨なんだと思うんですけれども,そうすると,母親が未成年の子の代理人であったときに母親が行使できるかと,それは未成年の子の否認権を否定することで母親に行使させない,まずそういう構造になっているということでよろしいんでしょうか。

(PDF p.27)

一次資料

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