民法(親子法制)等の改正に関する中間試案

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概要

令和3年2月に法制審議会民法(親子法制)部会が取りまとめた「民法(親子法制)等の改正に関する中間試案」です。

本試案では、無戸籍問題の解消や子どもの利益の確保を目的として、懲戒権規定の見直し、嫡出推定制度、女性の再婚禁止期間、嫡出否認制度など、親子法制全般にわたる民法改正の方向性が示されました。今後のパブリックコメントや最終的な法改正のたたき台となる重要な資料です。

中間試案のポイント

  • 親権者の懲戒権規定について3案を提示
  • 親による体罰禁止を明文化する案を提示
  • 子の人格尊重を民法上明記する案を提示
  • 嫡出推定制度を出生時基準へ見直す方向性を提示
  • 女性の再婚禁止期間の廃止を提案
  • 子・母・前夫への嫡出否認権拡大を検討
  • 成年に達した子への否認権新設も検討対象とした
  • 生殖補助医療との関係や認知制度の見直しも将来課題として整理した。

主な内容

懲戒権規定の見直し

現行民法822条について、次の3案が提示されました。

  • 甲案:懲戒権規定そのものを削除する
  • 乙案:「指示・指導(又は助言)」へ改め、体罰を禁止する
  • 丙案:監護教育に際して体罰を禁止する規定へ改める

いずれの案でも、殴る・蹴るだけでなく、長時間正座をさせることや食事を与えないことなど、肉体的苦痛を制裁目的で与える行為は「体罰」に含まれるとの整理が示されました。

親権者の義務の明確化

民法820条について、

  • 子の利益のために監護・教育を行うこと
  • 子の人格を尊重すること

を明文化する案が提示されました。

また、児童虐待に至らない場合でも、人格を傷つける言動は親権行使として許されないことをより明確にする方向性が示されています。

嫡出推定制度の見直し

嫡出推定については、現行制度を大きく見直し、

  • 婚姻中に懐胎した子
  • 婚姻前に懐胎しても婚姻後に出生した子

を夫の子と推定する制度へ変更することが提案されました。

さらに、離婚後300日以内に出生した子であっても、母が再婚後に出生した場合には再婚後の夫の子と推定する制度を設ける方向性が示されました。

ただし、

  • 死別の場合も適用するか
  • 一律に適用するか

については甲案・乙案の2案が示されています。

女性の再婚禁止期間

女性の再婚禁止期間(民法733条)は削除する方向で整理されました。

一方で、前夫・後夫双方の推定が重なる場合については、

  • 再婚後の夫を当然に父と推定する案
  • 父を定める訴えによって決定する案

が提示されています。

嫡出否認制度の見直し

中間試案では、現行制度では夫だけに認められている嫡出否認権について、大幅な見直しが提案されました。

主な内容は次のとおりです。

  • 夫の否認権の行使期間を「出生を知ってから3年又は5年」に延長
  • 未成年の子に否認権を認める案
  • 母にも否認権を認める案
  • 再婚後の夫が父と推定された場合には、前夫にも否認権を認める案

また、前夫が否認権を行使する際には、

  • 生物学上の父子関係を要件とする案
  • 子の利益を考慮する案

の2案が示されています。

成年に達した子の否認権

成年に達した子についても、新たに否認権を認めるかが検討事項となりました。

  • 甲案:現行どおり認めない
  • 乙案:成年(将来的には18歳)又は25歳到達後一定期間に限って認める

乙案では、生物学上の親子関係だけでなく、これまで形成されてきた社会的な親子関係や子の利益も考慮する方向性が示されています。

父又は子が死亡した場合の制度

嫡出否認制度の見直しに伴い、

  • 否認権者が死亡した場合
  • 否認の相手方が死亡した場合

の訴訟手続についても整理が行われました。

子が死亡した場合には直系卑属による承継を認める案、夫が死亡した場合には検察官を被告とする制度などが提案されています。

今後も引き続き検討する事項

中間試案では、直ちに制度化せず、今後の検討課題として次の事項も整理されています。

  • 嫡出承認制度の実効化
  • 生殖補助医療によって出生した子の父子関係
  • 認知制度の見直し
  • 未成年者の認知手続
  • 事実に反する認知の取消制度
  • 不正目的による認知への対応

これらについては、今回の親子法制改正との整合性を踏まえながら、今後さらに検討を続けるものとされました。

中間試案の特徴

本中間試案は、無戸籍問題への対応を契機として始まった親子法制の見直しを、嫡出推定制度だけでなく、親権、懲戒権、再婚禁止期間、嫡出否認制度、認知制度、生殖補助医療まで含めた包括的な民法改正案として整理した点に大きな特徴があります。

特に、子どもの利益を制度全体の中心に据える考え方が明確に打ち出され、従来の「父母の権利」を中心とした制度から、「子の法的地位の安定」「人格尊重」「実親子関係との調和」を重視する方向への転換が示されました。また、多くの論点について複数案を提示することで、広く国民から意見を募るパブリックコメントの基礎資料として位置付けられています。

一次資料

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