会議日
開催概要
第4回会議では、前回から引き続き「嫡出推定制度」の見直しが審議されました。
主な議題は以下の4点です。
- 民法772条(嫡出推定規定)の見直し
- 嫡出否認制度の見直し(否認権者)
- 嫡出否認制度の見直し(否認権の行使期間)
- 認知制度の見直し
前回までに議論されてきた「無戸籍問題」を背景に、誰が嫡出否認を請求できるのか、いつまで請求できるのかという制度設計について具体的な議論が行われました。
第4回のポイント
今回の部会では、「生物学上の父に嫡出否認権を認めるべきか」が最初の大きな論点となりました。
DV被害や無戸籍問題では、生物学上の父しか子どもを支援できないケースもある一方で、生物学上の父へ広く否認権を認めることは、家庭の平穏や子の法的地位の安定を損なうとの懸念も示されました。
また後半では、嫡出否認権を行使できる期間について議論され、現行法の「出生を知ってから1年」という期間は短すぎるのではないかとの意見が多く示されました。
主な論点
- 生物学上の父に嫡出否認権を認めるべきか
- 無戸籍問題への制度的対応
- 母・子への否認権拡大との整合性
- 否認権の行使期間を延長すべきか
- 「子の利益」と「法律関係の早期安定」をどう両立させるか
主な委員の発言
発言見出しは人物ページへリンクしています。要旨は短い整理です。全文は一次資料(議事録PDF)を参照してください。
この回の発言者(人物)
棚村政行委員
所属・肩書
早稲田大学法学学術院 教授(家族法)
発言要旨
生物学上の父へ否認権を認める必要性は理解できるものの、単に血縁があるだけで権利を認めることには慎重であるべきと述べました。
共同生活や養育実態などの要件を設けても制度設計は難しく、子どもの法的地位の早期確定や家庭の平穏を考えると、対象を広げることには課題が多いと指摘しました。
また、否認権の行使期間については、客観的期間と主観的期間を組み合わせる第1案が最もバランスが良いとの考えを示しました。
編纂メモ(運営の評価ラベルではない)
- 生物学上の父への否認権拡大には慎重
- 子の法的安定性を重視
- 行使期間は客観・主観双方を組み合わせる案を支持
髙橋良委員
所属・肩書
弁護士(神奈川県弁護士会所属)
発言要旨
DV被害や無戸籍問題では、母親が手続を進められないケースが多く、実際には生物学上の父だけが子どもを支援できる場合もあると説明しました。
そのため、生物学上の父にも一定の否認権を認める必要性があると主張しました。
また、母親が避難生活や育児の最中に訴訟を行うことは容易ではなく、行使期間も現行より長くする必要があると述べました。
編纂メモ(運営の評価ラベルではない)
- 生物学上の父への否認権付与に前向き
- 無戸籍問題の実態を重視
- 行使期間の延長を支持
大森啓子幹事
所属・肩書
弁護士(第二東京弁護士会所属)
発言要旨
無戸籍当事者の多くはDVや精神的苦痛など深刻な事情を抱えており、母親自身が手続できない例が少なくないと説明しました。
そのため、生物学上の父による手続や、子どもの代理人としての制度整備も検討すべきではないかと提案しました。
編纂メモ(運営の評価ラベルではない)
- 無戸籍問題の現実を重視
- 子どもの利益を守る制度整備を支持
久保野恵美子幹事
所属・肩書
東北大学大学院法学研究科教授科 教授
発言要旨
DV被害者への支援は重要だと認めつつ、その問題を親子法だけで解決しようとすることには慎重な姿勢を示しました。
また、生物学上の父へ権利を与えることは制度全体への影響が大きいため、子どもの利益を守る別の制度も検討すべきと述べました。
編纂メモ(運営の評価ラベルではない)
- 親子法だけで解決することには慎重
- 制度全体との整合性を重視
木村敦子幹事
所属・肩書
京都大学大学院法学研究科教授
発言要旨
ドイツ法では生物学上の父に否認権が認められているものの、その制度は無戸籍問題を前提としたものではなく、生物学上の父が子どもの養育に関わるケースを想定していると紹介しました。
また、否認権の行使期間については、期間設定の理由を「子の身分の安定」だけでなく、社会的親子関係の形成という観点からも説明すべきだと指摘しました。
編纂メモ(運営の評価ラベルではない)
- 比較法の観点から慎重に検討
- 制度趣旨の整理を重視
垣内秀介幹事
所属・肩書
東京大学大学院法学政治学研究科教授
発言要旨
生物学上の父へ否認権を認めるとしても、一定の要件で限定する必要があると指摘しました。
また、否認権の行使期間についても、誰に権利を認めるかによって適切な制度設計は変わるため、権利者と期間は一体的に検討すべきと述べました。
編纂メモ(運営の評価ラベルではない)
- 限定的な制度設計を支持
- 制度全体の整合性を重視
sourcesから追記した発言
運営の評価ラベルは付けません。
窪田充見委員
所属・肩書
神戸大学大学院法学研究科教授
発言要旨
よろしいですか。新しいことを付け加えるわけではないのかもしれませんが,先ほどから,木村幹事からあった問題提起のことをしばらく考えていたのですが,現行法ですと,否認権者は父のみに限られていますので,父の権利を制限するというのは,同時に子の身分の安定にもつながるということで,その1人の権利行使の制限の問題が,同時に子の身分に直結するということですから,子の地位の安定という説明を比較的簡単に使うことができたのだろうと思います。
(PDF p.23)
水野紀子委員
所属・肩書
白鷗大学教授
発言要旨
今までの議論でも明らかになった点だと思いますけれども,出自を知る権利から一直線に結論が出るというものではないと思います。またそれぞれの国で、この権利については,これまでに,相当議論をされた経緯がありました。たとえばドイツの場合は,昔は嫡出推定を覆すのが非常に難しかったので,出自を知る権利をてこにして,嫡出否認を広げようという流れがあって,そして,それに対しては,出自を知らされない権利というのも,きちんと認められるべきだという反論がありました。
(PDF p.34)
大村敦志部会長
所属・肩書
学習院大学法科大学院教授
発言要旨
ありがとうございます。必要性ということを先ほど申し上げたんですけれども,一方で,実務的なニーズがどのくらいあるのかという,そういう意味での必要性というのがある。それと,千葉委員の御指摘になったところだろうと思いますけれども,今の久保野幹事の御指摘は,今回,嫡出子について,親子関係の成立に係る子の地位の安定ということを議論したのだとすると,そのことと密接に関わる問題は,やはり解決しておく必要があるのではないかという,言わば法体系の整合性の観点から,是非とも議論することが必要なのではないかという御指摘だったかと思います。
(PDF p.53)
第4回の特徴
第4回は、「嫡出否認制度を誰のための制度と考えるのか」が本格的に議論された回でした。
無戸籍問題への現実的な対応を重視する意見と、子どもの法的地位の安定や家族関係の保護を重視する意見が交錯し、制度設計の難しさが浮き彫りとなりました。
また、否認権の行使期間についても、現行制度の見直しには概ね理解が示された一方で、具体的な期間や起算点については今後さらに検討を深める必要があるとの認識で一致しました。