法制審議会 民法(親子法制)部会 第18回(令和3年7月20日)

会議日

目次

開催概要

  • 開催日:令和3年7月20日
  • 議題
  • 個別論点の検討(2)
    • 懲戒権に関する規定の見直し
    • 嫡出推定制度の見直し
    • 別居後に懐胎した子に関する規律
    • 嫡出否認制度の見直し
    • 父子関係の当事者の一方が死亡した場合の規律
    • 事実に反する認知の見直し
  • 部会長:大村敦志(学習院大学法科大学院教授)
  • 開催形式:法務省大会議室及びWeb会議方式による開催

第18回のポイント

第18回会議では、要綱案の具体化に向けた個別論点の検討がさらに進められました。前半では、懲戒権規定の見直しを中心に、新たに提示された乙1案・乙2案について集中的な議論が行われ、親による「指示・指導」の位置付けや、体罰禁止規定の表現について意見が交わされました。

続いて、嫡出推定制度の見直しについて、複数回の再婚を想定した条文構成や、死別と離婚を区別する甲案・乙案の比較、婚姻前の胎児認知との関係などが検討され、制度全体の整合性を重視した議論が行われました。

主な論点

  • 懲戒権規定の見直し(乙1案・乙2案)
  • 「指示及び指導」の規定方法
  • 体罰及び精神的苦痛を与える行為の禁止
  • 嫡出推定制度の条文整理
  • 再婚・複数婚姻がある場合の父の推定
  • 死別の場合の取扱い
  • 婚姻前の胎児認知との関係

主な委員の発言

発言見出しは人物ページへリンクしています。要旨は短い整理です。全文は一次資料(議事録PDF)を参照してください。

この回の発言者(人物)

棚村政行委員

所属・肩書

早稲田大学教授

発言要旨

懲戒権規定について、新たに示された乙1案・乙2案の趣旨は理解できるとしつつも、「指示及び指導」を民法上明記することには慎重な姿勢を示しました。

児童の権利委員会一般的意見の引用方法についても、2006年の一般的意見だけではなく、その後の国際的な議論では「非暴力による子育て」がより強調されるようになっていることから、引用の仕方によって誤解を招かないよう見直すべきであると指摘しました。

また、乙1案のように「指示及び指導をしなければならない」と義務付ける規定は、親への過度なプレッシャーや、行き過ぎた行為を正当化する口実となるおそれがある一方、乙2案のように配慮義務として整理するのであれば一定の合理性があるとの考えを示しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 乙1案には慎重
  • 乙2案を基本的に支持
  • 「指示及び指導」の明文化には慎重
  • 国際的な子どもの権利保障との整合性を重視

磯谷文明委員

所属・肩書

弁護士(東京弁護士会所属)

発言要旨

乙1案について、「必要な指示及び指導をしなければならない」と義務化すると、親が社会的圧力を受ける原因となり、子育てに悪影響を及ぼすおそれがあると指摘しました。

一方、乙2案のように親が監護・教育を行う際の配慮義務として規定することには大きな異論はなく、「指示及び指導」という文言についても、「監護及び教育」といったより包括的な表現へ置き換えることを提案しました。

また、正当なしつけが可能であることについては、法律ではなく行政による広報などで周知すべき問題であるとの考えを示しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 乙1案に反対
  • 乙2案を支持
  • 「監護及び教育」への表現変更を提案
  • 法律よりも広報による周知を重視

山本恒雄委員

所属・肩書

社会福祉法人恩賜財団母子愛育会愛育研究所客員研究員

発言要旨

乙1案は親の義務や責任を強調する趣旨であるものの、結果として親を追い詰めたり、不適切な解釈を生むおそれがあると指摘しました。

乙2案については、親が子どもの年齢や発達段階、心身への影響に配慮しながら監護・教育を行うという趣旨が明確であり、より適切な制度設計であると評価しました。

さらに、体罰だけでなく「心身に有害な影響を及ぼす言動」についても禁止規定に明記することが、暴力によらない子育てを明確に示す上で重要であると述べました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 乙2案を支持
  • 乙1案には慎重
  • 精神的苦痛を与える行為の明文化を支持

山根香織委員

所属・肩書

主婦連合会常任幹事

発言要旨

親に求められる内容としては、子どもの年齢や発達段階、心身への影響に十分配慮することこそ重要であり、その趣旨を示す乙2案の方が国民へ適切なメッセージを伝えられるとの考えを示しました。

また、体罰禁止を独立した規定として明示する構成にも賛成しつつ、全体としては「指示及び指導」の文言を含め、より分かりやすい条文表現へ整理する余地があると述べました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 乙2案を支持
  • 体罰禁止の明文化を支持
  • 条文表現の整理を提案

井上久美枝委員

所属・肩書

日本労働組合総連合会総合政策推進局総合局長

発言要旨

乙1案について、「指示及び指導をしなければならない」と義務付けることで、一般の親に対し過度な義務を課す印象を与え、結果として行き過ぎた指導を正当化するおそれがあると指摘しました。

また、「指示」という表現は命令的な意味合いを持つため、しつけを口実とした不適切な行為につながる懸念があると述べました。

さらに、体罰だけでなく、子どもの心身や発達に有害な影響を及ぼす言動まで含めた禁止規定とすることが、子どもの利益を守る観点から望ましいとの考えを示しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 乙1案には慎重
  • 「指示」の文言に慎重
  • 心身や発達への有害な影響を含めた規定を支持

大石眞委員

所属・肩書

京都大学名誉教授

発言要旨

乙2案で規定されている「子の年齢や発達、心身への影響に配慮する」という内容は、丙案においても当然に含まれる考え方であり、その趣旨を明文化するかどうかの違いにすぎないのではないかと指摘しました。

また、体罰禁止規定については、「体罰又は心身に有害な影響を及ぼす言動」よりも、「身体に対する暴力その他心身に有害な影響を及ぼす行為」と整理した方が、概念の重複がなく分かりやすいとの見解を示しました。さらに、甲案について積極的な支持意見が見当たらないのであれば、今後の整理も検討すべきではないかと述べました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 配慮義務の趣旨を重視
  • 文言整理を提案
  • 甲案の整理を提案

窪田充見委員

所属・肩書

神戸大学大学院法学研究科教授

発言要旨

嫡出推定制度の条文案について、複数回婚姻した場合の推定規定自体は理解できるものの、「嫡出否認の訴えにより否認された者を除く」という表現を推定規定の中に組み込む構成には違和感があると指摘しました。

また、複数回婚姻した場合に、最後の夫について嫡出否認が成立した後、順次前の夫へ推定が移ることをより明確に規定した方が、制度として理解しやすくなるとの考えを示しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 条文構成の整理を重視
  • 規定の分かりやすさを重視

井上委員

所属・肩書

委員

発言要旨

嫡出推定制度については、子の父を早期かつ明確に確定できるという観点から、再婚後に出生した子を再婚後の夫の子と推定する甲案を支持しました。

死別の場合でも再婚は本人の意思によるものであり、離婚との区別を設ける必要性は高くないと述べました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 甲案を支持
  • 子の法的安定性を重視

中田裕康委員

所属・肩書

東京大学大学院法学政治学研究科教授

発言要旨

甲案を採用した場合、前夫との相続関係などに影響が及ぶ可能性があることから、子の利益を保護するため、必要に応じて特別代理人の選任などの制度的手当ても検討すべきであると提案しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 子の利益保護を重視
  • 補完制度の検討を提案

大森啓子幹事

所属・肩書

法務省関係幹事

発言要旨

婚姻前に胎児認知がされている場合には、父母双方が法的な親子関係を形成する意思を既に示していることになるため、その意思が後の婚姻によって当然に覆る制度には違和感があると述べました。

また、実務上も血縁上の父との親子関係を維持したいという当事者の希望は少なくなく、制度変更によって嫡出否認など追加手続が必要となれば、費用や時間の負担が生じることにも配慮すべきであると指摘しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 胎児認知の意思を重視
  • 当事者負担への配慮を重視

sourcesから追記した発言

運営の評価ラベルは付けません。

佐藤隆幸幹事

所属・肩書

法務省民事局参事官

発言要旨

御指摘ありがとうございます。乙案では,指示,指導ということで従前から御提案しているところでございます。その(注)の中で児童権利委員会の一般的意見について引用させていただいておりますが,今,御指摘としましては,一般的意見についても,流れといいますか,近年重点の置かれ方が変わってきているといった御知見を頂いたものと理解いたしました。

(PDF p.5)

石綿はる美幹事

所属・肩書

一橋大学法学研究科准教授

発言要旨

今の胎児認知の点について重ねて発言させていただければと思います。大森幹事,棚村委員のお話を聞いて,難しい問題だということは理解いたしましたが,しかし,今回,制度が変わることによって生じ得る問題であると思いますので,手当てをする必要は高いのではないかと思います。

(PDF p.15)

大村敦志部会長

所属・肩書

学習院大学法科大学院教授

発言要旨

ありがとうございました。別居ということに光を当てて議論をすると,200日までに生まれた子どもについて,同居しているかどうかという問題はどうなるのかということを考える必要が出てくる,それについて考えるに当たっては,先ほど石綿幹事の発言にも出てまいりましたけれども,懐胎時の状況だけではなくて,出産時までを考慮に入れて考えるというアプローチというのも意味があるのではないか,このような御指摘を頂いたと受け止めました。

(PDF p.27)

第18回の特徴

第18回では、懲戒権規定の見直しについて、乙1案よりも乙2案を支持する意見が大勢を占めました。特に、「指示及び指導」を義務として規定することへの懸念や、親への過度な負担、子どもの権利保障との整合性などが共通の論点となりました。また、体罰だけでなく精神的苦痛や心身への有害な影響を与える行為まで含めた規定とすべきとの意見も多く示されました。

嫡出推定制度については、複数回婚姻した場合の条文構成や、死別の場合の取扱い、胎児認知との関係など、制度間の整合性をどのように確保するかが中心的なテーマとなりました。制度の基本的方向性には大きな異論はない一方、条文の分かりやすさや当事者保護の在り方について、多角的な検討が行われたことが特徴です。

一次資料

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