会議日
開催概要
- 開催日:令和元年9月10日
- 議題:懲戒権に関する規定の見直し
- 部会長:大村敦志(東京大学教授・民法学者)
第2回のポイント
第2回では、第1回で整理された論点を踏まえ、民法822条の「懲戒権」規定をどのように見直すべきかについて本格的な議論が始まりました。
事務局からは、主に次の3つの方向性が示されました。
- 懲戒権規定そのものを削除する
- 「懲戒」という文言を別の表現(例:「しつけ」など)に改める
- 民法にも体罰禁止など、許されない行為を明記する
委員らはこれらを比較しながら、それぞれのメリット・デメリットを議論しました。
主な論点
- 懲戒権規定を削除すべきか
- 「懲戒」という用語を残すべきか
- 民法で体罰禁止を明文化すべきか
- 子どもの権利をどのように位置付けるか
- 保護者支援との関係
主な委員の発言
発言見出しは人物ページへリンクしています。要旨は短い整理です。全文は一次資料(議事録PDF)を参照してください。
この回の発言者(人物)
棚村政行委員
所属・肩書
早稲田大学教授(家族法・比較家族法)
発言要旨
第1回に引き続き、懲戒権規定は削除すべきとの立場を示しました。
海外(北欧、ドイツ、イギリスなど)の制度を紹介しながら、「親の権利」から「子どもの権利」へという国際的な流れを説明しました。
また、
- 子どもの人格や人権を尊重すること
- 暴力や屈辱的な教育は許されないこと
を民法上でも明確に示すべきと主張しました。
一方で、規定を変えるだけでは虐待はなくならず、相談支援や啓発活動も不可欠であると述べています。
編纂メモ(運営の評価ラベルではない)
- 懲戒権削除:賛成
- 体罰禁止:賛成
- 子どもの権利重視
- 比較法を重視
磯谷委員
所属・肩書
弁護士(家族法・少年事件)
発言要旨
懲戒権を削除する方向に賛成。
「懲戒」を「しつけ」に置き換える案については、「しつけ」という言葉自体が曖昧であり、新たな解釈上の問題を生むおそれがあるとして慎重な姿勢を示しました。
また、禁止事項を定めるだけでなく、児童福祉法に基づく保護者支援も重要であると述べています。
編纂メモ(運営の評価ラベルではない)
- 懲戒権削除:賛成
- 「しつけ」への置換:慎重
- 保護者支援も必要
久保野恵美子幹事
所属・肩書
東北大学教授(民法)
発言要旨
懲戒という文言は見直すべきとしつつも、単に「禁止事項」を列挙するだけでは十分ではないと指摘しました。
親権は本来、
- 子どもの利益のために行使されること
- 親への支援制度と一体で考えること
が重要であり、親を一方的に規制するだけでは適切な制度にはならないとの考えを示しました。
編纂メモ(運営の評価ラベルではない)
- 懲戒規定見直し:賛成
- 親支援を重視
- 子どもの利益を中心に制度設計すべき
幡野幹事
所属・肩書
慶應義塾大学教授(民法・比較法)
発言要旨
フランスで2019年に成立した改正民法を紹介。
EUでは多くの国が「しつけとしての暴力」を禁止する方向に進んでおり、フランスでも親権は「身体的・精神的暴力を伴わずに行使される」と明文化されたことを説明しました。
また、こうした改正は社会へのメッセージとして大きな意味を持つと紹介しました。
編纂メモ(運営の評価ラベルではない)
- 比較法を紹介
- 欧州の立法動向を重視
井上委員
所属・肩書
弁護士(子どもの権利・児童福祉)
発言要旨
懲戒権規定を残すことは、「懲戒なら許される」という誤ったメッセージを社会に与えると指摘しました。
一方で、民法に体罰禁止だけを明記すると、それ以外は許されるという反対解釈が生じる可能性があるとして慎重な考えも示しています。
また、保護者への支援体制を充実させることが重要であると述べました。
編纂メモ(運営の評価ラベルではない)
- 懲戒権削除:賛成
- 体罰禁止の規定方法は慎重に検討
- 保護者支援を重視
sourcesから追記した発言
運営の評価ラベルは付けません。
水野紀子委員
所属・肩書
白鷗大学教授
発言要旨
23年の改正のときの議論を思い出しておりました。今までの議論とも重なってくるのですけれども,本当に必要なことは親に対する支援であって,ただ,日本の社会福祉的な支援は本人が望まないと介入できないという前提で動いています。でも,諸外国,特に民法の母法などでは,そうではなく,親に対する強制的支援が実際に活用されています。
(PDF p.17)
大森啓子幹事
所属・肩書
弁護士(第二東京弁護士会所属)
発言要旨
懲戒権の規定を残すかという点については,私も同じく削除が妥当と考えております。懲戒の言葉の意味については,部会資料の5ページの(注1)にも記載されていますけれども,結局のところ制裁であります。一昔と違って今の御時世では,程度として,昔は許容されていたものも今は許容されないといったことが解釈としてはあり得るとしても,例えば,叱るということは今も一定程度は許容されるだろうということがあるとしても,それは制裁として許されるものではなく,飽くまでもそれは監護教育の教育として許容される話であって,制裁として許容される行為は恐らくないのではないかと考えます。
(PDF p.19)
大村敦志部会長
所属・肩書
学習院大学法科大学院教授
発言要旨
ありがとうございます。懲戒権については削除の方向で考える,それから,しつけもやはり濫用されるだろうということですね。その後どうするかにつきましては,先ほどから幾つかの考え方が出ておりますが,体罰禁止の方が萎縮効果は少ないかもしれないけれども,しかし,更に検討する余地があるという御趣旨の発言だったかと思います。
(PDF p.20)
窪田充見委員
所属・肩書
神戸大学大学院法学研究科教授
発言要旨
木村委員からあった3点の話で,第1点目はどっちでもいいのかなという感じもするのですが,ちょっとだけ発言をさせていただきますと,私自身も子どもの人格を尊重してという文言を入れることによってどのぐらい変わるかというのは,それほど明確ではないなという気もしています。ただ,恐らく中田委員からお話の中で,820条の方に規定しても822条の方に規定しても同じようなことを,言わば表裏という形で規定することはできるということはあったと思うのですが,形としては,例えば禁止に関してはある程度限定的に明示した上で,しかしやはり受け皿になるようなものに関して,820条でそれを受…
(PDF p.29)