会議日
開催概要
- 開催日:令和元年10月15日
- 議題:
- 民法第772条(嫡出推定規定)の見直し
- 嫡出否認制度の見直し(第1回・否認権者の見直し)
- 部会長:大村敦志(東京大学教授・民法学者)
第3回のポイント
第3回からは、これまで議論されてきた懲戒権の問題からテーマが変わり、嫡出推定制度の見直しについて本格的な審議が始まりました。
今回の中心となったのは、婚姻成立後200日以内に生まれた子にも嫡出推定を及ぼすべきかという点です。現行法では、この期間に生まれた子には嫡出推定が及ばず、親子関係不存在確認の訴えによって、後年でも法律上の親子関係が覆される可能性があります。そのため、子どもの法的地位が不安定になるとの問題意識が示されました。
また、離婚後300日以内に出生した子について、再婚後であれば再婚相手の子と推定できるよう制度を見直す案についても議論が行われました。背景には、無戸籍児問題の解消という課題があります。
一方で、制度を改正すると、実際には血縁関係がないことを承知で結婚した夫婦にも嫡出推定が及び、嫡出否認手続が必要になることから、現場の実情を踏まえ慎重に検討すべきとの意見も出されました。
主な論点
- 婚姻成立後200日以内の子にも嫡出推定を及ぼすべきか
- 子どもの法的地位の安定と生物学上の親子関係との調整
- 離婚後300日以内に出生した子の嫡出推定の見直し
- 無戸籍児問題の解消
- 嫡出否認制度との関係
- 女性の再婚禁止期間との整合性
- 海外(ドイツ・フランス等)の制度との比較
主な委員の発言
発言見出しは人物ページへリンクしています。要旨は短い整理です。全文は一次資料(議事録PDF)を参照してください。
この回の発言者(人物)
棚村政行委員
所属・肩書
早稲田大学教授(家族法・比較家族法)
発言要旨
婚姻成立後200日以内に生まれた子にも嫡出推定を及ぼすことに賛成しました。
近年は妊娠を契機に結婚する夫婦が増えており、婚姻関係にある以上、夫が父である蓋然性は高いと指摘しました。また、子どもの法的地位を早期に安定させることが重要であり、血縁のみを重視して長年築かれた親子関係を覆すことには慎重であるべきと述べています。
海外法も紹介しながら、婚姻を基礎に親子関係を確定する考え方を維持しつつ、必要であれば嫡出否認制度を柔軟に見直すことで対応すべきとの考えを示しました。
編纂メモ(運営の評価ラベルではない)
- 婚姻後200日以内への嫡出推定に賛成
- 子どもの法的地位の安定を重視
- 比較法を重視
- 嫡出否認制度の見直しも必要
磯谷委員
所属・肩書
弁護士(家族法・少年事件)
発言要旨
婚姻後200日以内の子への嫡出推定については慎重な立場を示しました。
児童福祉の現場では、自分の子ではないことを承知で妊娠中の女性と結婚する事例や、制度を十分理解できない当事者も少なくないと説明しました。
制度改正により嫡出否認手続を取らなければならなくなると、経済的・精神的な事情から手続ができない人もおり、理論だけでは解決できない現実があると指摘しています。
また、現時点で婚姻後200日以内の運用が大きな社会問題となっているのかについても疑問を呈しました。
編纂メモ(運営の評価ラベルではない)
- 婚姻後200日以内への嫡出推定に慎重
- 福祉現場の実情を重視
- 当事者負担を重視
- 制度改正の必要性を慎重に検討
大森幹事
所属・肩書
弁護士
発言要旨
婚姻後200日以内の子にも一律に嫡出推定を及ぼすことには慎重な考えを示しました。
実際には、自分の子ではないことを理解した上で結婚するケースも存在するとし、そのような当事者に嫡出否認の手続やDNA鑑定などの負担を課すことには疑問があると指摘しました。
現行制度では実情に応じた届出が可能であり、その柔軟性を維持する必要があるとの考えを示しました。
編纂メモ(運営の評価ラベルではない)
- 嫡出推定拡大に慎重
- 当事者の手続負担を重視
- 現行制度の柔軟性を評価
窪田充見委員
所属・肩書
神戸大学教授(民法)
発言要旨
婚姻後200日以内の子にも嫡出推定を及ぼす案に賛成しました。
現在の制度では、推定されない嫡出子は長期間にわたり親子関係不存在確認の対象となり得るため、子どもの法的地位が不安定になると指摘しました。
一方で、出生届の取扱いや例外規定については、制度全体との整合性を考えながら検討する必要があると述べています。
編纂メモ(運営の評価ラベルではない)
- 婚姻後200日以内への嫡出推定に賛成
- 子どもの利益を重視
- 制度全体の整合性を重視
幡野幹事
所属・肩書
慶應義塾大学教授(民法・比較法)
発言要旨
基本的には嫡出推定を拡大する方向に賛成しました。
一方で、フランス法では出生届の記載方法によって嫡出推定を及ぼさない制度があることを紹介し、日本でも一定の選択肢を残す制度設計が可能か検討すべきと提案しました。
また、制度改正によって新たな無戸籍児問題を生まないよう配慮が必要であると述べています。
編纂メモ(運営の評価ラベルではない)
- 嫡出推定拡大に概ね賛成
- 比較法を重視
- 制度運用への配慮を重視
sourcesから追記した発言
運営の評価ラベルは付けません。
大村敦志部会長
所属・肩書
学習院大学法科大学院教授
発言要旨
ありがとうございました。これからの審議に当たりましても,広い意味での嫡出推定制度の中に含まれるところの772条の嫡出推定規定の見直しと,それから774条以下の嫡出否認の見直しということを分けて御議論を頂きたいと思っていますが,本日は,そのうちの772条関係について,まず今の御説明を基に御議論を頂きまして,多少時間が余りましたら,資料の第3の部分を御説明いただきまして,774条以下の嫡出否認の方にも入りたいと思っております。
(PDF p.5)
垣内秀介幹事
所属・肩書
東京大学大学院法学政治学研究科教授
発言要旨
すみません,もう1点質問をさせていただければと思うんですけれども,これは主として磯谷先生か大森先生に対する御質問ということになるかと思うんですけれども,先ほどの磯谷先生の御発言の中にもありましたけれども,仮に嫡出推定が拡張されて,出生主義的な取扱いがこの局面で導入されるということになった場合に,もちろん知らないで不意打ちという問題は別途あるかと思いますが,そういう制度を前提としたときに,今,そういった悩みというか状況に直面している当事者の方であれば,どういう行動をとることが一般には予想されるんだろうかということなんですけれども,選択肢の問題というのが一つ…
(PDF p.16)
井上久美枝委員
所属・肩書
日本労働組合総連合会総合政策推進局総合局長
発言要旨
ありがとうございます。すみません,10ページの4の派生・関連する論点のところから少しお話をさせていただきたいと思います。こちらの論点の(1)に女性の再婚禁止期間の定めがあります。そこと関連して発言をさせていただきたいと思います。まずですが,先ほどからその嫡出推定を含めて法制度が分かりづらいという話がありますけれども,やはりその法制度は国民にとって分かりやすい内容であるということが望ましいと思っています。
(PDF p.22)
水野紀子委員
所属・肩書
白鷗大学教授
発言要旨
昔,フランス法を勉強したときには,子どもの提訴権というのは自明ではなかったのですが,それが時代とともに子どもの権利ということで表に出てまいりました。以前は,父子関係は,写真のポジとネガのようなもので,お父さんがきちんと父親として育てたということだと,子どもの提訴権はないという議論がなされていた時代があります。
(PDF p.44)