法制審議会 民法(親子法制)部会 第19回(令和3年9月7日)

会議日

目次

開催概要

  • 開催日:令和3年9月7日
  • 議題
  • 個別論点の検討(3)
    • 嫡出推定制度の見直し
    • 嫡出否認制度の見直し
    • 別居等の後に懐胎された子に関する規律
    • 届出による嫡出推定の例外制度
    • 成年に達した子の否認権
    • 第三者提供精子による生殖補助医療
    • 事実に反する認知の効力
  • 部会長:大村敦志(学習院大学法科大学院教授)
  • 開催形式:法務省大会議室及びWeb会議方式による開催

第19回のポイント

第19回会議では、これまでの議論を踏まえた要綱案の整理が進められ、嫡出推定制度や嫡出否認制度について具体的な制度設計が集中的に検討されました。特に、複数回の婚姻・離婚があった場合の父の推定方法、死別後に再婚した場合の取扱い、胎児認知の効力など、実務上生じ得る複雑な事例への対応が主要なテーマとなりました。

また、前夫の嫡出否認権について、生物学上の父子関係をどのような位置付けで要件化するかが重要な論点となり、制度趣旨と実務運用の双方から活発な議論が行われました。

主な論点

  • 嫡出推定制度の条文整理
  • 死別後の再婚と父の推定
  • 特別代理人制度の要否
  • 胎児認知と嫡出推定の関係
  • 前夫の嫡出否認権の要件
  • 母の否認権の必要性
  • 複数婚姻がある場合の父子関係

主な委員の発言

発言見出しは人物ページへリンクしています。要旨は短い整理です。全文は一次資料(議事録PDF)を参照してください。

この回の発言者(人物)

窪田充見委員

所属・肩書

神戸大学大学院法学研究科教授

発言要旨

死別後に再婚した場合の父の推定について、制度自体には理解を示しつつも、「前夫の生物学上の子である蓋然性より再婚後の夫の子である蓋然性が高い」という説明だけでは十分ではないと指摘しました。

実際には死別後すぐに再婚する事例など様々なケースがあり、生物学上の蓋然性のみでは制度趣旨を説明し切れないことから、再婚家庭で子どもが生活するという社会的・福祉的観点を含めた整理が必要であると述べました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 制度の方向性には理解
  • 制度趣旨の説明方法を重視
  • 子の福祉を踏まえた整理を提案

中田裕康委員

所属・肩書

早稲田大学大学院法学政治学研究科教授

発言要旨

死別後に再婚した場合でも、生物学上は前夫の子である可能性が残ることから、そのような子の利益を保護する制度が必要であると指摘しました。

母が否認権を行使しない場合には子の利益が十分保護されない可能性があるため、前夫側の親族からの申立てによる特別代理人制度を限定的に認めることが適当ではないかと提案しました。申立権者や期間は限定的な制度とすべきとの考えも示しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 特別代理人制度を支持
  • 子の利益保護を重視
  • 制度適用は限定的とすべき

水野紀子委員

所属・肩書

白鷗大学教授

発言要旨

日本では協議離婚が容易に成立するため、短期間に複数回の婚姻・離婚が行われる事例も制度上は想定されると指摘しました。

その場合、複数の元夫が父となる可能性や、生物学上の父が複数候補となるケースがあり得ることから、誰に否認権が認められるのか、前夫死亡時に親族へ権利承継を認めるのかなど、制度全体の整理が必要であると質問しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 複数婚姻事例への対応を重視
  • 否認権者の整理を求める
  • 実務上の運用可能性を重視

垣内秀介幹事

所属・肩書

東京大学大学院法学政治学研究科教授

発言要旨

前夫の否認権について、「子が前夫によって懐胎されたものでないとき」という要件を本文ではなくただし書へ移す案について疑問を呈しました。

現在の夫との生物学上の父子関係が否定されても、前夫との生物学上の父子関係が立証できない場合には、現行の整理と異なる結論となる可能性があり、立証責任や訴訟上の帰結について慎重な検討が必要であると指摘しました。また、生物学上の父子関係が不明なまま前夫が現在の父子関係へ介入できることの妥当性についても問題提起しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • ただし書への変更に慎重
  • 立証責任の整理を重視
  • 制度の実務運用を重視

大森啓子幹事

所属・肩書

法務省関係幹事

発言要旨

前夫の否認権について、「子が前夫によって懐胎されたものでないとき」という要件をただし書へ移す案について、家事事件ではDNA鑑定を強制できないため、前夫が鑑定を拒否すれば真偽不明のままとなる可能性があると指摘しました。

その結果、現在の夫との父子関係だけが否定され、前夫との生物学上の父子関係も確定しないままになる事態が現実に生じ得るとして、制度運用への懸念を示しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • ただし書への変更に慎重
  • DNA鑑定の実務を重視
  • 真偽不明事案への対応を懸念

井上久美枝委員

所属・肩書

日本労働組合総連合会総合政策推進局総合局長

発言要旨

母の否認権については、家庭内暴力などにより離婚時に十分な協議ができず、父が親権者となる事例も存在することから、親権の有無だけで母の否認権を制限すべきではないと述べました。

また、前夫への通知制度について、実際に再婚後の夫が前夫の戸籍謄本などを取得できるのかという実務上の疑問を示し、制度設計の現実性について確認を求めました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 母の否認権を支持
  • DV事案への配慮を重視
  • 手続の実効性を重視

棚村政行委員

所属・肩書

早稲田大学教授

発言要旨

前夫の否認権について、生物学上の父子関係をただし書に位置付ける今回の提案は、婚姻制度を基礎とする現行制度との連続性、家族形態の多様化への対応、子の利益の保護など複数の要素を総合的に考慮した結果として評価できると述べました。

また、「子の利益を害する目的」の判断については、具体的な事例の積み重ねを通じて解釈が形成されるべきであり、制度全体として適切なバランスが取られているとの見解を示しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • ただし書案を支持
  • 制度全体の均衡を重視
  • 子の利益を重視

窪田充見委員

所属・肩書

神戸大学大学院法学研究科教授

発言要旨

前夫の否認権は、生物学上の父子関係がある場合に限って現在の父子関係へ介入できるという整理で議論されてきた経緯があり、その要件をただし書へ移すことによって、前夫であるという法的地位だけで介入できる印象を与えかねないと指摘しました。

立証責任の問題だけでなく、制度趣旨そのものが分かりにくくなるおそれがあることから、なお検討の余地があるとの考えを示しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • ただし書案に慎重
  • 制度趣旨の明確化を重視
  • さらなる検討を提案

水野紀子委員

所属・肩書

白鷗大学教授

発言要旨

日本では協議離婚が容易で待婚期間も見直されることから、短期間に複数回の婚姻・離婚が繰り返される事例が制度上想定されると改めて指摘しました。

DV被害者が新たな婚姻を選択するケースなども踏まえ、複雑な家族関係を前提とした制度設計が必要であり、戸籍制度や嫡出推定制度全体との整合性を十分検討すべきであるとの考えを示しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 多様な家族形態への対応を重視
  • 戸籍制度との整合性を重視
  • 実務上の影響を重視

sourcesから追記した発言

運営の評価ラベルは付けません。

大石眞委員

所属・肩書

京都大学名誉教授

発言要旨

13ページからの母の否認権の説明のところなんですが,具体的には14ページですけれども,その必要性というのを議論するというのが,この段落,4のところまでの段落で,まず,親権を失った母に否認権を認めることの実際上の必要性ということで,四つの場面を考えておられて,それを受けて,このうち云々というので,それぞれの場合について,言わば積極論とそうでないものという書き分けが多分されていると思うんですが,上から四つ書いてあるんですが,仮にそれをA,B,C,Dとしますと,このうちというのは,C,Dを受けて述べている。そこはこういう,適切でないと考えられる一方で,またこういうことも考えられると。

(PDF p.18)

石綿はる美幹事

所属・肩書

一橋大学法学研究科准教授

発言要旨

一つ前の窪田委員の発言に重ねてということになるかと思います。第4の制度を検討すること自体は賛成でございます。一定の場合に,出生届を提出してもらうということを目指すというためには,検討することが必要な制度ではあるとは思いますが,嫡出推定制度全体で見たときには,裁判所の関与なく嫡出推定の否定ができるという,極めて異質な制度であるということは否定できないかと思いますので,窪田委員が御指摘になったように,そのような届出を認めるための書面を厳格に考える。

(PDF p.34)

第19回の特徴

第19回では、嫡出推定制度・嫡出否認制度について、制度の基本方針よりも、実際の運用を見据えた細かな制度設計が中心的な議論となりました。特に、前夫の否認権の要件について、生物学上の父子関係をどのように位置付けるかを巡り、制度趣旨と実務運用の双方から活発な意見交換が行われました。

また、複数回の婚姻や死別後の再婚、DV事案など、従来の制度では十分に想定されていなかった多様な家族形態を前提とした制度設計の必要性が改めて共有され、子の利益と法的安定性の両立をどのように図るかが引き続き重要なテーマとなりました。

一次資料

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