会議日
開催概要
- 開催日:令和3年10月5日
- 議題
- 個別論点の検討(4)
- 懲戒権に関する規定等の見直し
- 嫡出否認制度の見直し
- 成年に達した子の否認権
- 第三者提供精子による生殖補助医療
- 事実に反する認知の見直し
- 別居後懐胎子に関する規律
- 届出による嫡出推定の例外制度
- 嫡出推定制度の見直し
- 部会長:大村敦志(学習院大学法科大学院教授)
- 開催形式:法務省大会議室及びWeb会議方式による開催
第20回のポイント
第20回会議では、これまで継続的に議論されてきた懲戒権規定の見直しについて、事務局が従前の乙案を取り下げ、丙案を中心とする整理案を提示しました。あわせて、親権者による子の人格や権利の尊重、体罰禁止規定の在り方について最終的な方向性に向けた議論が行われました。
また、後半では嫡出否認制度の見直しについて、母の否認権や特別代理人制度など、前回までの議論を踏まえた修正案が提示され、制度の具体的な運用を意識した検討が始まりました。
主な論点
- 懲戒権規定の見直し(丙案)
- 子の人格・権利を尊重する規定
- 体罰禁止規定の表現
- 心身に有害な影響を及ぼす言動の位置付け
- 母の否認権の導入
- 特別代理人制度の見直し
主な委員の発言
発言見出しは人物ページへリンクしています。要旨は短い整理です。全文は一次資料(議事録PDF)を参照してください。
この回の発言者(人物)
磯谷文明委員
所属・肩書
弁護士(東京弁護士会所属)
発言要旨
事務局がこれまでの議論を踏まえて整理した丙案を評価した上で、体罰だけではなく、精神的な苦痛を与える行為についても明確に禁止規定へ盛り込むべきであると述べました。
虐待実務では身体的虐待だけでなく精神的虐待が子どもへ長期的な影響を与えることが広く認識されており、海外法制でも精神的暴力を対象とする例が増えていることから、「その他心身に有害な影響を及ぼす言動」を明文化する必要があると主張しました。
編纂メモ(運営の評価ラベルではない)
- 丙案を支持
- 精神的虐待の明文化を支持
- 子どもの保護強化を重視
井上久美枝委員
所属・肩書
日本労働組合総連合会総合政策推進局総合局長
発言要旨
前回の意見を踏まえ、「子の発達」という文言が条文へ反映されたことを評価しました。
また、兄弟姉妹間での差別など、体罰以外にも子へ精神的苦痛を与える行為は問題であり、国民への分かりやすいメッセージとするためにも、「体罰その他心身に有害な影響を及ぼす言動」と規定することが望ましいとの考えを示しました。
編纂メモ(運営の評価ラベルではない)
- 丙案を支持
- 精神的苦痛を含む禁止規定を支持
- 分かりやすい条文を重視
棚村政行委員
所属・肩書
早稲田大学教授
発言要旨
体罰禁止規定については、「体罰」だけでは範囲が狭すぎるため、精神的に子どもを傷つける行為も含め、「その他心身に有害な影響を及ぼす言動」を加えるべきであると述べました。
また、民法に「子どもの権利」の考え方を盛り込むことには象徴的な意義があるとし、子どもが権利主体であることを社会へ示すメッセージとして、子の人格とともに子どもの権利尊重を規定することを支持しました。ただし、現在提案されている条文表現についてはなお工夫の余地があるとの認識も示しました。
編纂メモ(運営の評価ラベルではない)
- 精神的虐待の明文化を支持
- 子どもの権利の明文化を支持
- 国際的潮流との整合性を重視
山本恒雄委員
所属・肩書
社会福祉法人恩賜財団母子愛育会愛育研究所客員研究員
発言要旨
事務局の整理により条文構成が分かりやすくなったと評価しました。
一方で、「子どもの権利」については実体法上の細かな権利内容を規定する趣旨ではなく、子どもの人格と並ぶ理念として尊重すべきことを示す規定として検討すべきであると述べました。
また、体罰のみを禁止すると「叩かなければよい」という誤解を生みかねず、子どもの健全育成という観点から精神的な有害行為も対象に含めるべきであると指摘しました。
編纂メモ(運営の評価ラベルではない)
- 事務局案を評価
- 子どもの権利規定に前向き
- 精神的虐待の明文化を支持
窪田充見委員
所属・肩書
神戸大学大学院法学研究科教授
発言要旨
子どもの権利を尊重すること自体には異論はないものの、それを民法第820条の監護教育規定の中へ盛り込むことには慎重な姿勢を示しました。
第820条は親権の行使に関する規定であり、本来当然に保護されるべき財産権や人格権まで「配慮の対象」として位置付けることは、かえって規定の趣旨を曖昧にするおそれがあると指摘しました。
また、「体罰その他心身に有害な影響を及ぼす言動」という表現については基本的に賛成しつつも、通常の叱責まで含まれるとの誤解を避けるため、「不当性」が読み取れる文言へ整理する必要があるとの考えを示しました。
編纂メモ(運営の評価ラベルではない)
- 子どもの権利規定には慎重
- 精神的虐待の規定には賛成
- 文言の明確化を重視
山根香織委員
所属・肩書
主婦連合会常任幹事
発言要旨
懲戒権規定について丙案で検討を進めることに賛成しました。
一方で、「子どもの権利」を条文へ盛り込む場合には、現在の文章では人格尊重との関係や法令上の権利との関係が分かりにくく、さらに検討が必要であると述べました。
また、「体罰その他心身に有害な影響を及ぼす言動」を規定する方向には賛成し、制度改正後には親が必要以上に不安を抱かないよう十分な情報提供や支援も重要であると指摘しました。
編纂メモ(運営の評価ラベルではない)
- 丙案を支持
- 子どもの権利規定には慎重
- 体罰禁止規定の拡充を支持
大石眞委員
所属・肩書
京都大学名誉教授
発言要旨
懲戒権規定全体の見直しには賛成し、「その他心身に有害な影響を及ぼす言動」を加えることにも賛成しました。
一方で、「子どもの権利」を第820条へ書き込むことについては、人格と並べて個別の権利まで列挙する必要性には疑問があり、総則的な規定としては適切ではないとの見解を示しました。
また、補足説明における憲法上の権利と私法との関係についても、説明方法には改善の余地があると指摘しました。
編纂メモ(運営の評価ラベルではない)
- 全体の見直しを支持
- 子どもの権利規定には慎重
- 法体系との整合性を重視
久保野恵美子幹事
所属・肩書
東北大学大学院法学研究科教授
発言要旨
子どもの人格を尊重することには賛成しつつ、「権利」を具体的に規定するよりも、人格を対等な存在として尊重する趣旨を示す方が適切ではないかと述べました。
また、「体罰その他心身に有害な影響を及ぼす言動」を規定することには賛成し、違法性の判断だけでなく、望ましい子育てを社会へ発信するメッセージとしても重要であると評価しました。
さらに、体罰禁止規定を民法第822条へ置く理由について、制裁としつけとの関係をより明確に説明する必要があると指摘しました。
編纂メモ(運営の評価ラベルではない)
- 人格尊重規定を支持
- 子どもの権利規定には慎重
- 精神的虐待規定を支持
石綿はる美幹事
所属・肩書
一橋大学法学研究科准教授
発言要旨
子どもの権利を尊重する方向性には賛成しつつ、第820条第2項へ現在の形で規定することには慎重な姿勢を示しました。
また、「体罰その他心身に有害な影響を及ぼす言動」を規定することについては賛成し、その場合には民事上の違法性や親権停止・親権喪失などとの関係も整理しておく必要があると指摘しました。
編纂メモ(運営の評価ラベルではない)
- 子どもの権利規定には慎重
- 精神的虐待規定を支持
- 法的効果の整理を重視
第20回前編の特徴
第20回前編では、懲戒権規定の見直しについて、従来提案されていた乙案が事実上整理され、丙案を中心とする方向性に委員・幹事の大勢が賛同しました。特に、「体罰」に加えて精神的虐待や心身に有害な言動まで対象を広げることについては、多くの委員から積極的な支持が示されました。
一方、「子どもの権利」を民法へどのように位置付けるかについては、理念としての必要性には一定の理解が示されたものの、第820条へ具体的に書き込む方法については慎重意見も多く、条文構成や法体系との整合性が引き続き検討課題となりました。
sourcesから追記した発言
運営の評価ラベルは付けません。
幡野弘樹幹事
所属・肩書
立教大学教授
発言要旨
ありがとうございます。私も乙案について引き続き検討する方が望ましいと考えておりますが,もう少し基本的な考え方のレベルでの発言をさせていただきたいと思っております。その際に比較の素材として,フランス法の話を少しだけさせていただきたいと思っております。
(PDF p.24)
大村敦志部会長
所属・肩書
学習院大学法科大学院教授
発言要旨
ありがとうございました。先ほどの幡野幹事の御発言の中で紹介されたフランスの有力学説の中には,本日この部会内の議論で現れているのとは多少違った利益が強く主張されているようであるけれども,程度の問題はあるのかもしれないが,そうしたものもある程度考慮すると考えたとしたときに,要件としてどのような形にしておくのがよいかということも考える必要があるのではないか。
(PDF p.28)
水野紀子委員
所属・肩書
白鷗大学教授
発言要旨
婚姻の本旨に反するという形容詞について,これは含みがある表現だという意味で,とてもいい形容詞だと思います。全体的な制度設計として,私は多少遊びといいますか,周辺が曖昧なところがあっていいと思っております。従来の外観説の運用でも,当事者間で夫婦が自分たちは別居していたと証言すると,そして,実父との間でも合意ができていると,相当幅広く,簡易人訴の審判で認められてきました。
(PDF p.40)