法制審議会 民法(親子法制)部会 第17回(令和3年6月29日)

会議日

目次

開催概要

  • 開催日:令和3年6月29日
  • 議題
  • 個別論点の検討(1)
    • 嫡出推定制度の見直し
    • 別居後に懐胎された子による認知の訴え
    • 嫡出の承認制度
    • 生殖補助医療による親子関係
    • 事実に反する認知
    • 懲戒権規定の見直し
  • 部会長:大村敦志(学習院大学法科大学院教授)
  • 開催形式:法務省大会議室及びWeb会議方式による開催

第17回のポイント

第17回会議からは、要綱案の取りまとめに向けた個別論点の本格的な検討が開始されました。前半では、嫡出推定制度の見直しを中心に、300日規定の妥当性、離婚後300日以内に出生した子の取扱い、別居後に懐胎した子の認知制度などについて議論が行われました。

特に、無戸籍問題への対応として、再婚した場合だけでなく、婚姻を解消する意思をもって別居した後に懐胎した子についても、生物学上の父に対する認知の訴えを可能とする新たな制度案が提示され、その要件や実務上の運用について活発な意見交換が行われました。

主な論点

  • 嫡出推定期間(300日)の妥当性
  • 医学的知見を踏まえた嫡出推定制度
  • 婚姻解消後300日以内出生児の取扱い
  • 別居後に懐胎した子の認知制度
  • 「婚姻を解消する意思をもって別居」の要件
  • 前夫の手続関与の在り方
  • 裁判所による前夫聴取の個別判断
  • DV事案等における手続保障と子どもの安全への配慮
  • 無戸籍問題への対応

主な委員の発言

発言見出しは人物ページへリンクしています。要旨は短い整理です。全文は一次資料(議事録PDF)を参照してください。

この回の発言者(人物)

棚村政行委員

所属・肩書

早稲田大学教授

発言要旨

嫡出推定期間を300日とする現行制度については、制定当時の医学的知見だけでなく現在の医学的データや諸外国の制度とも大きく矛盾しておらず、一定の合理性が認められるとの考えを示しました。

また、別居後に懐胎した子について認知制度を整備する方向には賛成しつつ、日本には法定別居制度が存在しないため、「婚姻を解消する意思をもって別居」という要件をどのように客観的に認定するかが課題であると指摘しました。

さらに、無戸籍問題の解消という観点から制度を拡充する方向性には理解を示しつつ、親子関係不存在確認訴訟との関係も含めて、なお検討を続ける必要があると述べました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 300日規定の維持を支持
  • 認知制度の拡充に賛成
  • 別居要件の明確化を重視
  • 無戸籍問題への対応を重視

磯谷文明委員

所属・肩書

弁護士(東京弁護士会所属)

発言要旨

300日という期間自体には医学的合理性が認められる一方で、離婚直前まで性交渉が存在することを制度設計上どこまで前提とするかについては、別途検討の余地があるとの考えを示しました。

また、別居後の認知制度については、その趣旨は理解できるものの、実体法として新たな規律を設ける必要があるのか、あるいは家事事件手続法上の手続整備で対応できないかについても検討が必要であると指摘しました。さらに、「婚姻を解消する意思をもって別居」という要件については、より客観的な要件設定が望ましいとの考えを示しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 300日規定は概ね支持
  • 制度設計の整理を重視
  • 手続法による対応も検討すべき
  • 客観的要件を重視

木村敦子幹事

所属・肩書

京都大学大学院法学研究科教授

発言要旨

今回提案された別居後懐胎子に関する制度について、前回会議で示された救済案との関係や、従来の判例法理(外観説)との関係について質問しました。

また、「婚姻を解消する意思」という主観的要件を採用した理由について確認し、従来の客観的な「懐胎可能性」の考え方との違いを整理する必要があると指摘しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 制度趣旨の明確化を重視
  • 判例との関係整理を重視
  • 要件設定の明確化を求める

窪田充見委員

所属・肩書

神戸大学大学院法学研究科教授

発言要旨

別居後に懐胎した子について認知制度を設ける方向性には理解を示しつつ、「婚姻を解消する意思をもって別居した」という事実を、生物学上の父との認知訴訟の中で判断する制度構造そのものに疑問を呈しました。

DV事案など認定が容易な場合はともかく、一般的な事案では当該要件の立証や判断が難しく、制度全体として実務上適切に機能するか慎重に検討すべきであると述べました。

また、DVにより避難している事案では前夫への聴取を不要とする方向性には理解を示しつつ、その判断を認知訴訟の中で裁判所がどのような基準で行うのかについても慎重な検討が必要であると問題提起しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 制度の方向性には理解
  • 制度設計の妥当性を慎重に検討
  • 実務運用を重視

石綿はる美幹事

所属・肩書

法務省関係幹事

発言要旨

別居後に懐胎した子に関する新たな制度を設ける方向には賛成しつつ、「婚姻を解消する意思」をどのように客観的に確認するかが重要であると指摘しました。

その上で、離婚届不受理申出のように、別居開始時点や婚姻解消意思を客観的に示す制度を設けることができないか提案しました。

また、嫡出推定が及ばない子を法律上どのように位置付けるのか、出生届との関係も含めて制度全体を整理する必要があると述べました。さらに、部会資料で用いられている「夫婦関係の実態が失われている」という表現の意味についても確認を求めました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 制度創設に賛成
  • 客観的な別居確認制度を提案
  • 法的地位の整理を重視
  • 用語の明確化を求める

木村匡幹事

所属・肩書

裁判所関係幹事

発言要旨

裁判実務の立場から、「婚姻を解消する意思をもって別居した」という主観的要件は証拠上の認定が難しく、当事者の供述しか存在しない場合には審理の長期化や判断の不安定化につながるおそれがあると指摘しました。

また、従来の外観説は客観的事情を基礎として運用されてきたため、新制度で主観的要件を導入すると、前夫から事情を聴取する必要が生じる場面が増え、かえって制度趣旨に反する可能性もあるとの懸念を示しました。

特に、DV事案では前夫の関与を避ける制度趣旨には理解を示しつつも、聴取が必要か否かの判断は個々の事件の事情によって異なり、裁判所による事実認定と個別判断が重要になるとの実務上の課題を指摘しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 主観的要件に慎重
  • 裁判実務への影響を重視
  • 外観説との整合性を重視

中田裕康委員

所属・肩書

東京大学大学院法学政治学研究科教授

発言要旨

刑務所収容中の夫婦などを例に挙げ、「婚姻を解消する意思」が一方当事者だけに存在する場合でも制度が適用されるのか質問しました。

また、新制度の要件に該当しない場合には従来の外観説が適用されるのか、認知の訴えや前夫の関与の取扱いがどのようになるのかについて確認を求め、制度全体の適用範囲を明確にする必要があると述べました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 制度の適用範囲を重視
  • 要件と効果の整理を重視

久保野恵美子幹事

所属・肩書

東北大学大学院法学研究科教授

発言要旨

「婚姻を解消する意思をもって別居」という一点だけではなく、婚姻共同生活が継続的に失われている状態に着目する考え方も検討に値すると述べました。

離婚原因として一定期間の別居を評価する考え方とも共通する面があり、別居開始時点だけではなく、その後の夫婦関係全体を踏まえて制度を構成することも考えられるとの見解を示しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 継続的な別居状態を重視
  • 制度要件の柔軟な設計を提案

第17回前編の特徴

第17回前編では、中間試案に対する意見交換から一歩進み、要綱案を具体化するための制度設計が本格的に議論されました。特に、無戸籍問題の解決を図るための新たな認知制度については、導入自体には概ね賛成意見が多かった一方、「婚姻を解消する意思をもって別居」という新たな要件をどのように客観的かつ安定的に運用するかが最大の論点となりました。

裁判実務や戸籍実務への影響も踏まえながら、判例法理(外観説)との整合性や、無戸籍問題の解決と法的安定性とのバランスについて、多角的な観点から議論が深められたことが本会議前半の大きな特徴となっています。後半では、生殖補助医療による親子関係や事実に反する認知、懲戒権規定の見直しなど、さらに幅広い個別論点の検討へと進みました。

また、DV被害者が前夫との接触を避けながら認知手続を利用できるよう配慮する制度設計も重要な論点となりました。DV保護命令がある事案などでは前夫への聴取を要しないことが想定される一方、事実認定が必要な場合には裁判所が個別具体的な事情を踏まえて前夫への聴取の要否を判断する考え方が示され、制度運用を裁判所の個別判断に委ねる方向性についても議論が行われました。

sourcesから追記した発言

運営の評価ラベルは付けません。

大村敦志部会長

所属・肩書

学習院大学法科大学院教授

発言要旨

ありがとうございます。期間の長さのことだけを今申しておりますけれども,この点についてほかに御意見,いかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは,この点につきましては,300日という期間そのものについては今日でも合理性があるだろうということで,先に進ませていただきたいと思います。

(PDF p.6)

大森啓子幹事

所属・肩書

弁護士(第二東京弁護士会所属)

発言要旨

今回の提案につきましては,再婚以外にも救済をという方向で考えていただいており,その点に関しては私も賛同したいと考えております。ただ,具体的な今回の提案について3点ほど質問がありまして,発言をさせていただきます。1点目が,前回,第16回会議においても再婚以外の救済について検討があり,そのときには部会資料16において,婚姻解消後の出生の場合には血縁主義を採ることを正面から認めるのか,若しくは従前の延長ということでの解釈を考えるのか,2通りあるとした上で,後者の一つの例として,確か注書でしたけれども,一定期間出生届出が出されない場合には強制認知による方法を認め…

(PDF p.8)

幡野弘樹幹事

所属・肩書

立教大学教授

発言要旨

ありがとうございます。母の否認権について,部会資料を読ませていただくと,結局,妻の同意も必要という立場に基づいているように理解しました。もっとも,提案の文言としては,妻が夫の同意を得てという形で,妻の同意を明示しない形での提案になっております。

(PDF p.23)

土手敏行幹事

所属・肩書

法務省民事局民事第一課長

発言要旨

本日は御説明の機会を頂きましてありがとうございます。資料の御説明の前に,この制度が設けられた経緯につきまして,ペーパーがなくて恐縮なのですけれども,若干御説明させていただきたいと思います。日本国籍の取得につきまして,昭和59年にそれまでの父親の血統,父系血統主義と呼んでおりますけれども,父親の血統の父系血統主義といわれる制度,例えば,日本人の母の嫡出子であっても父が外国人の場合には日本国籍を取得できないということになるのですけれども,この制度から,昭和59年に,父母両系血統主義,日本人の母の嫡出子は父が外国人の場合にも日本国籍を取得できるという,父母両系血統主義という制度に改正されました。

(PDF p.32)

一次資料

目次