法制審議会 民法(親子法制)部会 第21回(令和3年11月2日)

会議日

目次

開催概要

  • 開催日:令和3年11月2日
  • 議題
  • 民法(親子法制)等の改正に関する要綱案のたたき台
  • 残された論点の補充的検討
  • 部会長:大村敦志(学習院大学法科大学院教授)
  • 開催形式:法務省大会議室及びWeb会議方式による開催

第21回のポイント

第21回会議では、これまで積み重ねてきた議論を踏まえ、要綱案のたたき台について具体的な条文構成や文言の最終整理が行われました。前半では、懲戒権規定の見直しを中心に、子の人格尊重規定の位置付けや「心身に有害な影響を及ぼす言動」の明文化について最終的な意見交換が行われました。

また、嫡出推定制度については、制度の基本的な方向性に大きな異論は示されず、特別代理人制度や嫡出推定制度の説明ぶりなど、制度全体の整理や補足説明の在り方が議論の中心となりました。

主な論点

  • 懲戒権規定の最終整理
  • 子の人格尊重規定の配置
  • 「心身に有害な影響を及ぼす言動」の位置付け
  • 子の年齢・発達への配慮規定
  • 嫡出推定制度の整理
  • 特別代理人制度の要否
  • 女性の再婚禁止期間廃止に伴う規律

主な委員の発言

発言見出しは人物ページへリンクしています。要旨は短い整理です。全文は一次資料(議事録PDF)を参照してください。

この回の発言者(人物)

磯谷文明委員

所属・肩書

弁護士(東京弁護士会所属)

発言要旨

事務局案で「子の人格の尊重」及び「心身に有害な影響を及ぼす言動」の禁止が盛り込まれたことを高く評価しました。

その一方で、前回案にあった「子の年齢及び発達の程度に配慮する」という規定については、実際の虐待事案では年齢や発達段階に見合わないしつけが問題となることが多いため、独立した規定として残す意義は依然として大きいと述べました。

また、「社会通念に照らして判断する」との補足説明だけでは軽微な体罰が許容されるとの誤解を生むおそれがあり、どのような体罰であっても許されないことが明確に伝わる説明とすべきであると指摘しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 事務局案を支持
  • 年齢・発達への配慮規定を維持すべき
  • 体罰禁止の明確化を重視

窪田充見委員

所属・肩書

神戸大学大学院法学研究科教授

発言要旨

懲戒権規定全体の整理については理解を示した上で、「その他心身に有害な影響を及ぼす言動」という表現でも違法性は十分限定されているとの考えを示しました。

一方、新たな規定を民法第822条へ置くことについては、監護教育の基本原則を定める内容である以上、居所指定権の規定との関係も考慮し、第820条の次に配置するなど、条文の位置自体を見直すことが望ましいと提案しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 規定内容を支持
  • 条文配置の見直しを提案
  • 法体系との整合性を重視

中田裕康委員

所属・肩書

東京大学大学院法学政治学研究科教授

発言要旨

「子の人格を尊重しなければならない」という規定は、第822条だけではなく、居所指定権や職業許可など親権全体に及ぶ理念であることから、第820条へ置く方が適切ではないかと述べました。

また、嫡出推定制度については、死別後の再婚事案における特別代理人制度について詳細な検討が行われたことを評価し、制度を設けないとする今回の整理については、将来的な検討課題を残しつつ了承するとの考えを示しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 人格尊重規定は第820条へ置くべき
  • 特別代理人制度は現段階では不要と理解
  • 制度全体の整合性を重視

棚村政行委員

所属・肩書

早稲田大学教授

発言要旨

懲戒権規定の方向性には賛成しつつ、親権規定全体の見直しとの関係も考慮して条文配置を検討すべきと述べました。

また、児童の権利条約が保障する子どもの意見表明権についても、将来的には民法上どのように位置付けるか検討する必要があり、今回の改正後も家族法制全体の見直しの中で継続的に議論すべきとの考えを示しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 改正案を支持
  • 条文配置の見直しを支持
  • 子どもの意見表明権の検討を提案

幡野弘樹幹事

所属・肩書

立教大学教授

発言要旨

今回の改正は実体法上の意味だけでなく、親権者に対する社会的メッセージとしても大きな意義を持つと指摘しました。

フランスでは婚姻時や認知時に親権に関する規定を読み聞かせる制度が設けられていることを紹介し、日本でも法改正後には条文内容が広く親へ周知されるような仕組みを整えることが重要であると提案しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 改正案を支持
  • 制度の周知を重視
  • 国民への啓発を重視

垣内秀介幹事

所属・肩書

東京大学大学院法学政治学研究科教授

発言要旨

前夫の嫡出否認権について、「子が前夫によって懐胎されたものであるときに限り」と本文で積極要件として規定する今回の整理を支持しました。

この整理により、現在の父子関係を尊重しつつ、前夫による否認権の行使を必要最小限に限定するという制度趣旨が明確になると評価しました。

また、前夫が複数存在する場合の判決効についても、それぞれ異なる否認権として理解する考え方が妥当であり、理論的にも整理しやすいとの見解を示しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 事務局修正案を支持
  • 現在の父子関係の安定を重視
  • 判決効の整理を支持

窪田充見委員

所属・肩書

神戸大学大学院法学研究科教授

発言要旨

垣内幹事の説明には理解を示した上で、前夫ごとに異なる否認権として整理する考え方については、補足説明でもより明確に記載し、将来の解釈上の疑義を防ぐべきであると述べました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 修正案を支持
  • 補足説明の充実を提案
  • 解釈の明確化を重視

水野紀子委員

所属・肩書

白鷗大学教授

発言要旨

現時点の日本の制度を前提とすれば、前夫による否認権を「子が前夫によって懐胎されたものであるとき」に限定する整理はやむを得ないと述べました。

一方で、このような制度設計はDNA鑑定を当然の前提とする印象を与えかねず、遺伝情報を高度なプライバシーとして保護する諸外国の考え方とは異なることから、将来的な制度の在り方については慎重な検討が必要であるとの懸念も示しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 現行案を容認
  • DNA鑑定への過度な依存に懸念
  • 将来的な制度見直しを提案

石綿はる美幹事

所属・肩書

一橋大学法学研究科准教授

発言要旨

嫡出の承認制度は、嫡出否認権者の拡大や出訴期間の延長に伴い、今後活用される場面が増える可能性があると指摘しました。

そのため、制度自体の存在や具体的な活用場面について、補足説明や広報を通じて分かりやすく周知する必要があると述べました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 制度周知を重視
  • 補足説明の充実を提案

木村敦子幹事

所属・肩書

京都大学大学院法学研究科教授

発言要旨

複数回の離婚・再婚が行われた場合に、前夫が嫡出否認権を行使する際の被告の範囲について問題提起しました。

懐胎時の夫がA、その後B・Cと再婚を経て出生した事例では、AがCだけを相手に否認権を行使するとBとの父子関係だけが残ることになり、制度趣旨と整合しない可能性があることから、B・C双方を相手方とする仕組みを検討すべきではないかと提案しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 制度の整合性を重視
  • 被告範囲の整理を提案

第21回後編の特徴

第21回後編では、要綱案の取りまとめを見据え、嫡出推定制度や嫡出否認制度について、制度の基本方針よりも条文構成や要件、判決効など実務上の運用を意識した細部の整理が中心となりました。特に、前夫の否認権の要件や複数回の婚姻・離婚がある場合の父子関係について、理論面と実務面の双方から丁寧な検討が行われました。

また、DNA鑑定への依拠の在り方や嫡出承認制度の周知など、改正後の実務運用や国民への情報提供に関する課題も共有され、制度の実効性を高めるための補足説明や広報の重要性が改めて確認されました。

sourcesから追記した発言

運営の評価ラベルは付けません。

大森啓子幹事

所属・肩書

弁護士(第二東京弁護士会所属)

発言要旨

私も磯谷委員と同様に,非常に難しい問題であるということは十分理解しておりますが,引き続きこの制度を作る方向で御検討をお願いしたいと思っております。今年の初めに行われたパブリック・コメントの結果を見ましても,圧倒的多数の方がこの制度に賛成され,反対された方は非常に少数だったと思います。

(PDF p.29)

久保野恵美子幹事

所属・肩書

東北大学大学院法学研究科教授

発言要旨

ありがとうございます。私も方向性としましては,基本的に窪田委員,山根委員の御意見に賛成です。もっとも出発点としましては,まず,取り上げないことにするという御提案に基本的にはまず賛成いたします。それは,資料の中に書かれておりますけれども,4ページの10行目以降辺りに書いてありますとおり,嫡出推定制度について,今回はその弊害を正していくために改正を検討しているわけですが,他方で制度が問題を生じさせることなく果たしている機能を阻害することになる可能性についても十分に注意しなくてはいけないのだろうと思います。

(PDF p.33)

一次資料

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