法制審議会 民法(親子法制)部会 第23回(令和3年12月21日)

会議日

目次

開催概要

  • 開催日:令和3年12月21日
  • 議題
  • 要綱案(案)に盛り込むことの是非を検討すべき論点
    • 嫡出否認制度に関する規律の見直し
    • 第三者提供精子による生殖補助医療に関する民法特例
    • 認知制度に関する見直し
  • 部会長:大村敦志(学習院大学法科大学院教授)
  • 開催形式:法務省大会議室及びWeb会議方式による開催

第23回のポイント

第23回会議では、要綱案の最終取りまとめを前に、なお検討が必要とされた論点について集中的な審議が行われました。前半では、嫡出否認制度の見直しを中心に、子が自ら否認権を行使するための出訴期間の特則や、否認後の監護費用の償還請求など、新たに追加された制度について議論が行われました。

特に、子自身による否認権の在り方については、社会的親子関係の保護と子の利益との均衡をどのように図るか、同居期間や養育状況をどのように評価するかが主要な論点となりました。

主な論点

  • 子が自ら否認権を行使するための出訴期間の特則
  • 社会的親子関係を判断するための「3年間の同居」要件
  • 父による養育状況と否認権行使の制限
  • 否認後の監護費用の償還請求
  • 嫡出承認制度の見直し
  • 子による承認制度の是非

主な委員・幹事の発言

発言見出しは人物ページへリンクしています。要旨は短い整理です。全文は一次資料(議事録PDF)を参照してください。

この回の発言者(人物)

窪田充見委員

所属・肩書

神戸大学大学院法学研究科教授

発言要旨

前回会議で提案した「養育」を要件とする考え方について、今回示された「3年間の同居」を基準とする整理は十分理解できると述べ、修正案に賛成しました。

また、嫡出否認後に元父が子へ監護費用の返還を請求できないことを明文化する規定についても、不当利得返還請求の可否を巡る紛争を避ける観点から評価し、今回の整理を支持しました。

一方で、父以外の扶養義務者への請求を妨げないという整理についても妥当であるとの見解を示しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 修正案を支持
  • 同居要件を容認
  • 子への償還請求禁止を支持

棚村政行委員

所属・肩書

早稲田大学教授

発言要旨

社会的親子関係を具体的な要件として表現するに当たり、「監護・養育」よりも「一定期間の同居」の方が客観的に立証しやすく、実務上も適切であると評価しました。

また、3年間という期間は一定の目安として合理性があり、父による養育状況を考慮するただし書との組み合わせによって適切な運用が期待できると述べました。

さらに、監護費用の償還請求についても、子への請求を否定し、本来の扶養義務者への請求のみを残す方向性を概ね支持しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 修正案を支持
  • 同居要件を支持
  • 監護費用償還規定を概ね支持

大森啓子幹事

所属・肩書

弁護士(第二東京弁護士会所属)

発言要旨

子が自ら否認権を行使する制度について、未成年者が実際にどの年齢から単独で訴えを提起できるのかを確認するとともに、家事事件手続法など手続面の整備について質問しました。

また、監護費用の償還請求については、元父による請求を明文で認める趣旨のただし書を置くことで、母や子が否認権行使をためらう事態が生じるおそれがあるとして、ただし書には慎重な姿勢を示しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 手続保障を重視
  • ただし書には慎重
  • 否認権行使への萎縮を懸念

大石眞委員

所属・肩書

京都大学名誉教授

発言要旨

補足説明において、「3年未満の同居」であっても父の養育状況によって否認権が制限されるとの説明は、本文だけでは読み取れず、ただし書との関係をより分かりやすく整理すべきであると指摘しました。

条文と補足説明との対応関係が理解しやすくなるよう、説明方法の修正を求めました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 制度趣旨には賛成
  • 補足説明の整理を要望

木村匡彦幹事

所属・肩書

最高裁判所事務総局家庭局第二課長

発言要旨

「父の利益を著しく害するとき」というただし書について、その判断基準が抽象的であることを指摘しました。

養育費を継続して支払っていた場合や、同居はないものの継続的な監護を行っていた場合など、具体的事例を挙げながら適用場面を確認し、将来の裁判実務に混乱が生じないよう、立法担当者による詳細な解説を求めました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 修正案を概ね支持
  • 解釈基準の明確化を要望
  • 実務上の予見可能性を重視

幡野弘樹幹事

所属・肩書

立教大学教授

発言要旨

子が自ら同居をやめた場合を、ただし書の判断において父の利益を大きく害する事情として扱うことには慎重であるべきと述べました。

社会的親子関係は父だけでなく子の側の意思も含めて形成されるものであり、子が父との同居を拒んだことを理由に不利益を課すことは適切ではないとの問題提起を行いました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 修正案の趣旨は理解
  • 子の利益を重視
  • ただし書の運用に慎重

中田裕康委員

所属・肩書

早稲田大学大学院法学政治学研究科教授

発言要旨

子が長期間にわたり否認権を有する制度は、血縁のない父子関係や社会的親子関係に対する社会の理解へ影響を及ぼす可能性があるため、制度趣旨を十分に周知することが重要であると述べました。

また、子自身が父を自由に選択できる制度ではなく、社会的親子関係を尊重する制度であることを丁寧に説明すべきであると指摘しました。

さらに、嫡出承認制度についても、今後引き続き検討すべき課題であるとの見解を示しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 制度趣旨の周知を重視
  • 社会的親子関係を重視
  • 承認制度の継続検討を提案

山根香織委員

所属・肩書

主婦連合会常任幹事

発言要旨

子どもが父を選択する制度であるとの誤解が生じないよう、制度趣旨について社会へ十分な情報提供を行う必要があると述べました。

また、嫡出承認制度については内容が分かりにくく、子が承認主体となる趣旨や制度との関係について、より丁寧な説明が必要であると指摘しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 制度趣旨の周知を重視
  • 承認制度の説明充実を要望

棚村政行委員

所属・肩書

早稲田大学教授

発言要旨

子を嫡出承認の主体へ加えることについて賛成し、否認権を認める以上、その反対方向の意思表示として承認制度を利用できる余地を設けることには意義があると述べました。

一方で、承認によって法的親子関係を確定させる制度は、生殖補助医療など将来の家族法制とも関係する重要な問題であり、手続や要件については現段階で詳細な規律を設けるのではなく、今後の検討課題とすることが適当であるとの考えを示しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 子による承認制度を支持
  • 手続整備は将来課題と整理

窪田充見委員

所属・肩書

神戸大学大学院法学研究科教授

発言要旨

子による嫡出承認については、否認権の行使以上に高度な判断能力が求められる可能性があると指摘しました。

養子縁組のように一定年齢を基準とする制度も参考にしながら、承認を有効に行うための年齢要件や判断能力について、更なる検討が必要であるとの見解を示しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 承認制度の方向性は理解
  • 年齢要件の検討を提案

磯谷文明委員

所属・肩書

弁護士(東京弁護士会所属)

発言要旨

子どもが承認主体となることには慎重な姿勢を示しました。

思春期の子どもは精神的に大きく揺れ動く時期であり、不十分な理解のまま承認してしまうことや、周囲からの働き掛けによって意思決定が左右される可能性があることから、子を承認主体へ追加することには懸念があると述べました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 子による承認制度に慎重
  • 子の意思形成への影響を懸念

sourcesから追記した発言

運営の評価ラベルは付けません。

大村敦志部会長

所属・肩書

学習院大学法科大学院教授

発言要旨

ありがとうございます。本日の審議の予定についてでございますけれども、前回の会議の最後に要綱案の原案をお示しできるように努めたいという趣旨のアナウンスがありましたが、まだ幾つか議論をすべき論点が残っていると考えられますところから、事務当局の準備状況なども勘案いたしまして、本日は要綱案の原案に盛り込むことの是非を検討すべき論点ということで、積み残した論点につきまして御議論を頂ければと考えております。

(PDF p.2)

久保野恵美子幹事

所属・肩書

東北大学大学院法学研究科教授

発言要旨

ありがとうございます。この嫡出の承認制度につきましては、もう少し以前の議論の段階のときに、そもそも残すかどうか、この制度は削除するということも考えられるのではないかという議論がされたという経緯がありました。その際に、いろいろな理解があったのだとは思いますけれども、私自身の今後に向けての期待といいますか、可能性についての考え方としましては、嫡出否認について否認権者や期間を拡大する改正をした後に、嫡出推定制度が守ろうとしていた安定性なり何かに影響が出ないかということを見守っていかなくてはならないところ、日本で社会的な親子関係の実態に基づく規律についての議論が…

(PDF p.18)

山本恒雄委員

所属・肩書

社会福祉法人恩賜財団母子愛育会愛育研究所客員研究員

発言要旨

今の議論で少し思うのですけれども、身分関係を子どもが判断するということに関わっていますよね。ですから、嫡出の承認と否認はワンセットで、どちらにするのかということを子どもが判断できるかという案件に行ってしまうのではないかと。それが、大人の世界だったら承認と否認は対になっていて、承認したら否認権はなくなるよとか、そういう条件整備で成り立つけれども、子どもの場合には自分の身分が大人に属していて依存的な生育の環境の中でいるわけですよね、かつ子ども自身の意思表示、判断能力というのも変化していくわけで、それを大人のような対の判断の要件と並べてしまうと合わない。

(PDF p.18)

水野紀子委員

所属・肩書

白鷗大学教授

発言要旨

ありがとうございます。認知制度を今度このように、変えていただいたことにつきまして、有り難く存じます。認知に限らず、婚姻にしろ何にしろなのですけれども、日本法の届出制度は非常に特殊ですので、そう簡単に西欧法とパラレルに議論できないところがございますから、このように対応していただいたことについては賛成したいと思います。

(PDF p.31)

第23回の特徴

第23回では、嫡出否認制度そのものへの賛否よりも、子による否認権や承認制度をどのような要件・手続で位置付けるかという制度設計が中心的な論点となりました。特に、社会的親子関係を重視するという制度趣旨を維持しつつ、子の意思決定能力や制度の安定性をどのように確保するかについて、多様な立場から議論が行われました。

また、制度内容が「子が親を自由に選べる制度」と誤解されないよう、改正法の趣旨を社会へ丁寧に説明することの重要性が委員・幹事から繰り返し指摘され、制度運用と広報の在り方も重要な課題として共有されました。

一次資料

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