法制審議会 民法(親子法制)部会 第6回(令和2年2月4日)

会議日

目次

開催概要

  • 開催日:令和2年2月4日
  • 議題
  • 参考人ヒアリング
  • 諸外国における懲戒権に関する規定等についての調査報告
  • 懲戒権に関する規定の見直しについての検討(二読)
  • 部会長:大村敦志(学習院大学法科大学院教授)

第6回のポイント

第6回会議では、これまで議論されてきた親権者の懲戒権について、法改正の是非を判断するための基礎資料として、児童相談所、医療、子育て支援の現場から参考人へのヒアリングが実施されました。また、フランス、イギリス、アメリカにおける懲戒権や体罰禁止に関する制度についても報告が行われ、海外制度との比較を踏まえた議論が進められました。

参考人からは共通して、体罰は子どもの心身の発達に悪影響を及ぼすことや、保護者が「懲戒権」や「しつけ」を理由として体罰を正当化する実態が紹介されました。そのため、懲戒権規定を削除するとともに、体罰によらない子育てを社会全体で支援する必要性が強調されました。

一方、委員からは、懲戒権規定を削除するだけで児童虐待が減少するのか、親への支援策をどのように充実させるべきか、海外制度を日本へどこまで取り入れることができるのかなど、多角的な視点から議論が行われました。

主な論点

  • 懲戒権規定を削除する必要性
  • 体罰が子どもの発達へ及ぼす影響
  • 「しつけ」と体罰の違い
  • 保護者による体罰の正当化への対応
  • 体罰によらない子育て支援
  • 諸外国における体罰禁止制度
  • 懲戒権規定削除と児童虐待防止との関係

主な委員・参考人の発言

発言見出しは人物ページへリンクしています。要旨は短い整理です。全文は一次資料(議事録PDF)を参照してください。

この回の発言者(人物)

影山参考人

所属・肩書

東京都児童相談センター児童福祉相談担当課長

発言要旨

児童相談所では、虐待を行った保護者から「懲戒権の範囲内である」「しつけとして行った」と説明される事例が少なくないと紹介しました。

こうした実態から、懲戒権規定は虐待を正当化する口実として利用されており、速やかに削除すべきと述べました。また、体罰を禁止するだけではなく、体罰によらない子育て方法を社会へ普及・啓発することも重要であると説明しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 懲戒権規定の削除に賛成
  • 体罰禁止を明確化すべき
  • 保護者への啓発を重視
  • 児童虐待防止を最優先

立花参考人

所属・肩書

国立成育医療研究センターこころの診療部長

発言要旨

精神医学や脳科学の研究成果を紹介し、体罰や暴言は子どもの脳や精神発達へ長期的な悪影響を及ぼすことが明らかになっていると説明しました。

また、軽い体罰であっても親子関係や子どもの発達へ悪影響を与えることが研究で示されており、「しつけ」と体罰は区別すべきであると述べました。

懲戒権規定の削除は、社会全体に「体罰は許されない」というメッセージを発信する意義があると評価しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 懲戒権規定の削除に賛成
  • 科学的根拠から体罰禁止を支持
  • ポピュレーション・アプローチを重視
  • 子どもの心身の発達を最優先

奥山参考人

所属・肩書

NPO法人子育てひろば全国連絡協議会理事長

発言要旨

地域の子育て支援の現場では、体罰を望んでいる保護者は多くなく、むしろ子育ての孤立や不安、相談相手の不足が深刻な課題であると説明しました。

懲戒権規定の削除には賛成する一方、親を責めるだけではなく、相談体制や居場所づくり、父親への支援、妊娠期からの切れ目ない支援などを併せて充実させることが不可欠であると述べました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 懲戒権規定の削除に賛成
  • 子育て家庭への支援を重視
  • 孤立防止を重視
  • 地域による子育て支援を推進

磯谷文明委員

所属・肩書

弁護士(東京弁護士会所属)

発言要旨

日本弁護士連合会が作成した体罰禁止に関する資料を紹介し、医学・心理学研究では体罰が子どもの発達や精神面に悪影響を及ぼすことが明らかになっていると説明しました。

また、海外では既に多くの国が家庭内体罰を禁止しており、日本でも懲戒権規定の見直しを進める必要があるとの考えを示しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 懲戒権規定の削除を支持
  • 体罰禁止を明確化すべき
  • 海外制度を参考にすべき
  • 科学的知見を重視

棚村政行委員

所属・肩書

早稲田大学教授

発言要旨

参考人に対し、「自分も体罰を受けて育ったが感謝している」と話す保護者へ、どのように体罰の問題点を説明しているのか質問しました。

体罰を受けた経験を正当化する心理や、保護者への支援・説得の在り方について現場の知見を確認し、法改正だけでなく保護者への丁寧な支援も重要であるとの姿勢を示しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 保護者支援を重視
  • 科学的根拠に基づく説明を重視
  • 制度改正と啓発を両立すべき

髙橋良委員

所属・肩書

弁護士(神奈川県弁護士会所属)

発言要旨

参考人に対し、血縁関係のない親子関係と児童虐待との関係について質問しました。

再婚家庭や養子縁組家庭など、血縁関係の有無だけで判断することはできないものの、支援が必要となる家庭の実態を踏まえて制度を検討する必要があるとの認識を示しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 現場の実態を重視
  • 多様な家族形態を踏まえた制度設計を重視

垣内秀介幹事

所属・肩書

東京大学大学院法学政治学研究科教授

発言要旨

体罰による悪影響について、どの程度の強さや頻度で子どもの発達へ影響が現れるのかを質問しました。

科学的知見の適用範囲を丁寧に確認し、制度改正を支える根拠について慎重に検討する姿勢を示しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 科学的根拠を重視
  • 制度設計の前提となる事実確認を重視

水野紀子委員

所属・肩書

白鷗大学大学院法務研究科教授

発言要旨

虐待リスクの高い家庭ほど支援を拒む傾向があることを踏まえ、そうした家庭へどのように支援を届けるべきか質問しました。

児童相談所や警察だけではなく、多機関が連携した支援体制の必要性や、強制的介入と支援とのバランスについて現場の意見を求めました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • ハイリスク家庭への支援を重視
  • 多機関連携を重視
  • 実効性のある制度設計を重視

sourcesから追記した発言

運営の評価ラベルは付けません。

大村敦志部会長

所属・肩書

学習院大学法科大学院教授

発言要旨

ありがとうございました。お手元の資料を御確認いただければと思います。そこで,次に,本日の審議の予定について,あらかじめ御説明をさせていただきたいと存じます。本日はまず,懲戒権に関する規定の見直しに関しまして,ヒアリングを行いたいと考えております。

(PDF p.2)

久保野恵美子幹事

所属・肩書

東北大学大学院法学研究科教授

発言要旨

参考資料6-3を御覧ください。英国法ということで,イングランド,ウェールズ地方の法の内容について,簡単に御紹介させていただきます。もっとも,今日取り扱います分野では,隣のスコットランドとの興味深い対比もありますので,そこには若干触れることにしたいと思います。

(PDF p.24)

窪田充見委員

所属・肩書

神戸大学大学院法学研究科教授

発言要旨

今,磯谷委員からも出たことと同じ点だろうと思いますが,私自身は,訓育という言葉は知らず,そもそもあるのかと,造語ではないかと思っていたのですが,きちんと辞書に載っていて,ここに書かれてあるとおり,教え育てることと書いてあります。ただ,そうしますと,結局,820条の規定による監護・教育に必要な範囲で,その子を教え育てることができるというのは,極端に言ったら,820条の規定による監護・教育に必要な範囲で監護・教育することができるといっているのと,ほとんど変わらないのではないのかという気がします。

(PDF p.46)

大石眞委員

所属・肩書

京都大学名誉教授

発言要旨

私は,丙案的なものに近い考え方なんですが,ただ,これは立法的な技術の問題にもなるんですけれども,親権を行う者はというのを,絶えずそれを主語にしなければいけないのかという問題は残ると思うんです。820条から824条までの構造を調べてみると,まず身上監護の問題,財産管理の問題,財産管理の前の身上監護の問題で820条があり,かつ,それについての懲戒は,一つの延長線の特徴的な部分だという話ですね。

(PDF p.50)

第6回の特徴

第6回は、部会として制度設計を直接議論するだけではなく、児童相談所、医療、地域子育て支援という異なる現場から専門家の意見を聴取したことが最大の特徴です。

参考人はいずれも、体罰が子どもの発達や親子関係に悪影響を及ぼすこと、保護者が「しつけ」や「懲戒権」を理由に体罰を正当化する実態があることを指摘し、懲戒権規定の見直しを支持しました。一方で、法改正だけでは十分ではなく、体罰によらない子育ての普及や、子育て家庭への継続的な支援体制の整備が不可欠であるとの認識が共有されました。

また、委員からは医学的・心理学的な研究成果の位置付けや、海外制度との比較、児童虐待防止策との関係について幅広い質問が行われ、制度改正の必要性だけでなく、その実効性や社会的な受け皿についても踏み込んだ議論が展開された回となりました。

一次資料

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