会議日
開催概要
- 開催日:令和4年2月1日
- 議題
- 要綱案の取りまとめに向けた検討
- 部会長:大村敦志(学習院大学法科大学院教授)
- 開催形式:法務省大会議室及びWeb会議方式による開催
第25回のポイント
第25回会議では、答申案の最終取りまとめに向け、要綱案及び補足説明の最終確認が行われました。前半では、懲戒権に関する規定の見直しについて、「体罰その他の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動」とする修正文言を中心に、制度趣旨や国民へのメッセージ性について集中的な議論が行われました。
委員・幹事からは、文言を明確化する趣旨には理解が示される一方、「健全な発達」という表現が禁止される行為の範囲を狭めるのではないかとの懸念や、「成長及び発達」とする方が適切ではないかとの提案も示されました。
主な論点
- 懲戒権規定の最終文言
- 「子の心身の健全な発達」の位置付け
- 体罰禁止規定との関係
- 親権者へのメッセージ性
- 補足説明の充実
- 「成長及び発達」への修正の可否
主な委員・幹事の発言
発言見出しは人物ページへリンクしています。要旨は短い整理です。全文は一次資料(議事録PDF)を参照してください。
この回の発言者(人物)
棚村政行委員
所属・肩書
早稲田大学教授
発言要旨
「子の心身の健全な発達」という表現を追加することで、禁止される言動の趣旨がより明確になるとして修正案に賛成しました。
また、国際的にも「子どもの健全な成長・発達」は広く用いられている概念であり、子どもの利益を具体化する表現として適切であると評価しました。
編纂メモ(運営の評価ラベルではない)
- 修正案を支持
- 国際的な理念との整合性を重視
- 文言の明確化を評価
磯谷文明委員
所属・肩書
弁護士(東京弁護士会所属)
発言要旨
今回の修正は最終段階で突然提案されたものであり、十分な議論を経ていない点に懸念を示しました。
また、「健全な発達」という文言を加えることで、禁止される範囲が狭く受け取られたり、将来の発達への影響が明確でない限り許容されるとの誤解を招くおそれがあると指摘しました。
さらに、「体罰その他」という条文構造から、体罰の解釈にも影響を及ぼし、軽微な体罰は許されるとの誤解につながる危険性を懸念しました。
編纂メモ(運営の評価ラベルではない)
- 修正案に反対
- 体罰禁止の趣旨を重視
- メッセージ性の低下を懸念
井上久美枝委員
所属・肩書
日本労働組合総連合会総合政策推進局総合局長
発言要旨
一般の国民が条文を読んだ際、「健全な発達」が何を意味するのか理解しにくく、親権者が自らのしつけを正当化する余地を与えかねないと指摘しました。
そのため、従前の「心身に有害な影響を及ぼす言動」の方が分かりやすく、社会全体へ体罰禁止のメッセージを伝えやすいとの考えを示しました。
編纂メモ(運営の評価ラベルではない)
- 修正案に慎重
- 分かりやすさを重視
- 社会へのメッセージ性を重視
山根香織委員
所属・肩書
主婦連合会常任幹事
発言要旨
修正案の趣旨自体には理解を示しつつも、条文が長く読みづらいため、文章構成を見直す余地があると述べました。
また、補足説明において「親権者の主観ではなく客観的に判断される」と明記された点は評価できると指摘しました。
編纂メモ(運営の評価ラベルではない)
- 修正案を概ね支持
- 条文構成の改善を提案
- 客観的判断基準を評価
久保野恵美子幹事
所属・肩書
東北大学大学院法学研究科教授
発言要旨
修正前の文言でも問題はなかったとの考えを示しつつ、修正が必要であるならば、「発達」だけではなく「成長及び発達」と表現した方が適切であると提案しました。
児童福祉法などでも「成長及び発達」という表現が用いられていることを踏まえ、より広い意味を持たせることができると説明しました。
編纂メモ(運営の評価ラベルではない)
- 修正案を条件付きで支持
- 「成長及び発達」への修正を提案
山本恒雄委員
所属・肩書
社会福祉法人恩賜財団母子愛育会愛育研究所客員研究員
発言要旨
文言を細かく限定しようとするほど、新たな反論や疑義が生じるおそれがあると指摘しました。
そのため、条文だけで全てを表現するのではなく、補足説明において制度趣旨を十分に示すことが重要であり、「子どもを傷付ける行為を防止する」という本来の目的を明確に伝えるべきであると述べました。
編纂メモ(運営の評価ラベルではない)
- 修正案を容認
- 補足説明の充実を重視
- 制度趣旨の明確化を要望
水野紀子委員
所属・肩書
白鷗大学大学院法務研究科教授
発言要旨
「子の心身の健全な発達」という文言を追加することで国民的な理解や立法過程における合意形成が進むのであれば、修正案を支持できるとの考えを示しました。
また、この文言によって禁止される範囲が狭くなるとは考えておらず、むしろ子どもの将来的な成長を妨げるような精神的な働き掛けも規律の対象として位置付けやすくなる可能性があると述べました。
編纂メモ(運営の評価ラベルではない)
- 修正案を支持
- 国民的理解を重視
- 将来的な成長への影響も考慮
窪田充見委員
所属・肩書
神戸大学大学院法学研究科教授
発言要旨
従来の「有害な影響」という表現だけでは禁止される行為の範囲が十分に限定されているか不安があったと述べ、新たな文言によって一定の指針が示されることには理解を示しました。
一方で、「健全な発達」という表現には違和感もあり、「成長及び発達」とした方が国民にも理解されやすいのではないかと提案しました。さらに、「健全な」という文言自体についても、有害という語との重複があるのではないかとの問題提起を行いました。
編纂メモ(運営の評価ラベルではない)
- 修正案を概ね支持
- 「成長及び発達」への修正を提案
- 文言の精査を要望
幡野弘樹幹事
所属・肩書
立教大学教授
発言要旨
「子の心身の健全な発達」という文言は、新たな制限を設けるものではなく、有害性を判断する際の指針を示す趣旨として理解していると述べました。
その上で、補足説明では具体例を示しながら、従来の規律内容と実質的な違いはないことを丁寧に説明すべきであると提案しました。
編纂メモ(運営の評価ラベルではない)
- 修正案を支持
- 補足説明の充実を要望
- 解釈指針として位置付け
石綿はる美幹事
所属・肩書
一橋大学法学研究科準教授
発言要旨
基本的には修正案に賛成しつつも、「健全な発達」という表現によって将来の影響だけが重視されるとの誤解が生じないよう配慮が必要であると述べました。
そのため、「有害な影響を及ぼし得る言動」との説明や、「成長及び発達」という表現を用いることも検討に値すると提案しました。
編纂メモ(運営の評価ラベルではない)
- 修正案を支持
- 説明方法の工夫を提案
- 将来のみを対象とする誤解を懸念
垣内秀介幹事
所属・肩書
東京大学大学院法学政治学研究科教授
発言要旨
従前の文言であっても修正文言であっても、制度趣旨を十分に説明しなければ誤解は避けられないと指摘しました。
「健全な発達」は必ずしも遠い将来だけを意味するものではなく、子どもの日々の生活や成長過程そのものを含む概念として理解すべきであり、その趣旨を丁寧に説明することが重要であると述べました。
編纂メモ(運営の評価ラベルではない)
- 修正案を支持
- 制度趣旨の説明を重視
- 子どもの日々の成長も含む概念と整理
中田裕康委員
所属・肩書
早稲田大学大学院法務研究科教授
発言要旨
制度として大きな方向性を示すことが重要であり、多くの国民が受け入れられる文言であれば今回の修正案は許容できるとの考えを示しました。
また、「心身の健全な発達」という表現が障害のある子どもにも当然に適用される概念であることを確認し、その点について事務当局及び厚生労働省から説明を受けました。
編纂メモ(運営の評価ラベルではない)
- 修正案を支持
- 国民的理解を重視
- 障害児への適用関係を確認
木村匡彦幹事
所属・肩書
最高裁判所事務総局家庭局第二課長
発言要旨
「子の心身の健全な発達」という文言によって、有害性を判断するための指針が示される意義は理解できると評価しました。
一方で、「発達」という言葉だけでは将来性や特定のイメージを想起させる可能性があることから、「成長及び発達」とすることや、補足説明において国民へのメッセージ性を十分に補う必要があると述べました。
編纂メモ(運営の評価ラベルではない)
- 修正案を概ね支持
- 「成長及び発達」を提案
- メッセージ性を重視
sourcesから追記した発言
運営の評価ラベルは付けません。
岸本武史委員
所属・肩書
内閣官房内閣審議官(子ども家庭局併任)児童虐待防止等総合対策室長
発言要旨
委員の厚生労働省子ども家庭局、岸本でございます。今、児童福祉法について少しお話がございましたので、所管の立場から御説明を申し上げます。御指摘のとおり、児童福祉法第1条の規定におきまして、全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのっとり、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有するとされております。
(PDF p.14)
髙橋良委員
所属・肩書
弁護士(神奈川県弁護士会所属)
発言要旨
少し発言させていただきます。21ページの3の第2段落、なおという段落についてです。ここで20行目から22行目に掛けて、将来の検討の必要性について、私の意見を書き加えていただいて、この点は感謝しております。その後ですけれども、こういう否認権を認めると生殖補助医療を行った意義が失われると、それから、自然懐胎によって生まれた子と差異が生じるから相当でないとされたとありますけれども、これは書いてあることは私もよく理解できるところです。
(PDF p.20)
佐藤隆幸幹事
所属・肩書
法務省民事局参事官
発言要旨
前回、認知制度の見直しについて御議論いただきました際に、認知について反対の事実があるときは、国籍法第3条の認知された子の国籍の取得に関する規定は適用しない、こういった規律を設けることに関しまして、水野委員からの御質問として、例えば虚偽の認知が刑事法上の犯罪行為に該当するような場合に、単に国籍の取得が認められないにとどまるのか、あるいは民事法上も親子関係が否定されることになるのかといったお尋ねを頂きました。この点につきまして、今回の見直しは飽くまでも国籍法第3条の規定の適用の可否に関するものであって、犯罪行為に該当するような身分行為について、その民事法上の…
(PDF p.21)
金子修委員
所属・肩書
法務省民事局長
発言要旨
民事局長の金子です。この部会の御審議の終了に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。要綱案の取りまとめを頂きましてありがとうございます。25回の長きに及ぶ部会となりましたけれども、その間、委員、幹事の皆様の御尽力、御協力に心より感謝申し上げます。
(PDF p.23)
大村敦志部会長
所属・肩書
学習院大学法科大学院教授
発言要旨
続きまして、部会長の私からも一言御挨拶を申し上げます。金子局長の御挨拶にあったとおり、本部会は2019年7月の第1回会議以降、本日まで25回の会議を重ねてまいりました。2018年の相続法改正の際には26回の会議を行っておりますので、ほぼ同じ時間を掛けて検討してきたということになります。
(PDF p.24)
第25回の特徴
第25回では、懲戒権規定そのものに異論があるというよりも、「子の心身の健全な発達」という新たな文言が国民へどのようなメッセージを発するのか、また実務上どのように解釈されるのかという点が中心的な論点となりました。多くの委員・幹事は修正案の方向性を支持しつつも、「成長及び発達」とする表現や補足説明の充実を求める意見を述べ、条文だけでなく立法趣旨の丁寧な説明の重要性が繰り返し確認されました。
また、障害のある子どもを含め、全ての子どもの健全な成長・発達を保障するという理念についても確認され、児童福祉法との整合性を踏まえた制度設計が共有されました。