法制審議会 民法(親子法制)部会 第8回(令和2年6月30日)

会議日

目次

開催概要

  • 開催日:令和2年6月30日
  • 議題
  • 民法第772条の嫡出推定規定等の見直し(二読)
  • 部会長:大村敦志(学習院大学法科大学院教授)
  • 開催形式:新型コロナウイルス感染症対策のため、会場参加とWeb参加を併用して開催

第8回のポイント

第8回会議では、新型コロナウイルス感染症の影響による中断を経て部会が再開され、嫡出推定制度の見直しについて二読審議が行われました。主なテーマは、民法第772条の規律をどのように見直すことで無戸籍問題の解消と子の法的地位の安定を両立させるかという点でした。

事務当局からは、婚姻中に懐胎した子だけでなく、婚姻中に出生した子についても夫の子と推定する考え方や、離婚後300日以内に出生した子であっても母が再婚後に出産した場合は再婚後の夫の子と推定する新たな規律案が提示されました。また、これらの見直しに伴い、女性の再婚禁止期間を廃止する方向性についても提案されました。

委員からは、子の利益や法的安定性を重視する観点からおおむね見直しの方向性を支持する意見が示された一方で、「推定」の法的意味や、懐胎主義と出生主義を併存させることによる影響、「推定の及ばない子」の法理との関係など、制度全体との整合性について慎重な議論が行われました。

主な論点

  • 婚姻中に出生した子を夫の子と推定する規律
  • 婚姻前に懐胎し婚姻後に出生した子の法的地位
  • 懐胎主義と出生主義の併存
  • 「推定」の法的意義の整理
  • 推定の及ばない子の法理との関係
  • 離婚後300日以内に出生した子の父子関係
  • 再婚後に出生した子の父性推定
  • 女性の再婚禁止期間の見直し

主な委員の発言

発言見出しは人物ページへリンクしています。要旨は短い整理です。全文は一次資料(議事録PDF)を参照してください。

この回の発言者(人物)

窪田充見委員

所属・肩書

神戸大学大学院法学研究科教授

発言要旨

婚姻中に出生した子を夫の子と推定するという方向性には理解を示しつつ、「夫婦は通常その子を養育する意思を有する」とする資料の説明について、「意思」がどの時点で、どのような内容を意味するのかを明確にすべきと指摘しました。

また、婚姻後200日以内に出生した子について新たな推定規定を設ける場合、「推定の及ばない子」の法理との関係を整理する必要があると述べ、実体法上のルールと判例法理との整合性を慎重に検討すべきとの考えを示しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 規律の見直しに基本的に賛成
  • 推定の及ばない子との関係整理を重視
  • 法制度全体の整合性を重視

水野紀子委員

所属・肩書

白鷗大学大学院法務研究科教授

発言要旨

「嫡出推定」という用語について、一般的な日本語の「推定」と法律上の意味が異なり、医学・生物学の専門家にも誤解されやすいことを指摘しました。

また、「推定」という表現にこだわる必要はなく、「夫の子とする」といったより分かりやすい表現も検討できると述べる一方、用語変更によって制度内容が変わるわけではないことも確認しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 分かりやすい法文表現を重視
  • 制度趣旨の明確化を支持
  • 法律用語の見直しに前向き

棚村政行委員

所属・肩書

早稲田大学教授

発言要旨

今回の見直しは、従来の懐胎主義だけでなく出生主義も取り入れることで、子どもの法的地位をより安定させる制度設計であると評価しました。

また、父子関係の決定に当たっては、生物学的な蓋然性だけではなく、親として子を育てる意思や生活実態も重要な要素であり、子どもの利益を中心に制度を構築すべきとの考えを示しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 見直しの方向性を支持
  • 子どもの利益を重視
  • 懐胎主義と出生主義の併存を支持

磯谷文明委員

所属・肩書

弁護士(東京弁護士会所属)

発言要旨

婚姻後200日以内に出生した子を一律に夫の子と推定する場合でも、生物学的に夫の子である可能性がないケースについて、従来の「推定の及ばない子」の法理をどのように扱うのか質問しました。

また、婚姻時点で既に妊娠していたことが判明し、その後離婚した場合など具体的な事例を挙げながら、新たな規律の運用について確認を求めました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 個別事案への対応を重視
  • 救済手続の整備を重視
  • 制度運用の明確化を求める

大森啓子幹事

所属・肩書

弁護士(第二東京弁護士会所属)

発言要旨

婚姻中に出生した子を夫の子と推定する規律について、条文構成上は「婚姻中に出生した子」と整理すれば足りるのではないかと指摘しました。

また、婚姻後200日以内に出生した子について新たな推定を設けた場合の運用や、従来の判例法理との関係について確認し、制度全体として分かりやすい規定とすることを求めました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 条文構成の明確化を重視
  • 制度全体の分かりやすさを重視
  • 実務との整合性を重視

幡野弘樹幹事

所属・肩書

東京大学大学院法学政治学研究科准教授

発言要旨

婚姻前に懐胎し婚姻後に出生した子について、フランス法のように出生届の記載内容によって嫡出推定の適用を調整する制度も検討の余地があると指摘しました。

出生届に一定の法的効果を認めることで、父性推定の重複を避けることが可能になると説明し、現段階で選択肢から排除すべきではないとの考えを示しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • フランス法を参考とした制度設計を提案
  • 父性推定の重複回避を重視
  • 制度の柔軟性を重視

中田裕康委員

所属・肩書

早稲田大学大学院法務研究科教授

発言要旨

嫡出推定制度の見直しでは、個々の規定だけでなく、嫡出否認制度や親子関係全体との整合性を踏まえて制度設計を行う必要があると指摘しました。

また、子どもの法的地位の安定という改正の目的を踏まえつつ、各制度がどのように連携して機能するのかを意識した検討が重要であるとの認識を示しました。

編纂メモ(運営の評価ラベルではない)

  • 制度全体の整合性を重視
  • 子どもの法的安定を重視
  • 段階的な制度整理を支持

sourcesから追記した発言

運営の評価ラベルは付けません。

井上久美枝委員

所属・肩書

日本労働組合総連合会総合政策推進局総合局長

発言要旨

ありがとうございます。休憩前までは,②と③とつながった中でということで御意見がありましたけれども,③を単体で見たときの意見として発言をさせていただきたいと思います。6ページの(2)には離婚の場合,そして7ページの(3)のところには死別の場合,8ページの(4)には婚姻の取消しの場合と,それぞれ論点が示されているわけですけれども,感覚的な意見で大変恐縮なのですが,離婚の場合と婚姻の取消しの場合は,大きく一緒にくくって考えてもいいのではないかという気がしております。

(PDF p.26)

髙橋良委員

所属・肩書

弁護士(神奈川県弁護士会所属)

発言要旨

ちょっと,余り考えまとまっていないんですけれども,無戸籍問題に関して,300日以内に生まれた子について,無戸籍者問題があるわけですけれども,それについて,再婚すれば,前の夫の嫡出推定よりも,後の夫の嫡出推定を優先して,戸籍が入れられると。無戸籍問題の一部が再婚によって救済されると,こういうふうに理解されているんだと思うんですけれども,実際に再婚という形で協力してくれるような男性がどれだけいるのか,どれぐらいこの制度によって,そういう救済が増えるのだろうかというようなところをちょっと考えるわけです。

(PDF p.33)

垣内秀介幹事

所属・肩書

東京大学大学院法学政治学研究科教授

発言要旨

先ほど来,ずっと非常に難しい問題だと感じていますけれども,冒頭のところでも少し議論があったところにも関係するかもしれませんけれども,取り分け,先ほど直前に認知との関係なんかについても御議論があったところとも関係しますが,現行法の下,あるいは現在の実務の下で認められている一定の救済と申しますか,外観説を前提として,場合によっては強制認知等の手続を介することにより,これは,再婚というようなことは前提とならず,また,婚姻が継続中であっても,婚姻継続中に生まれた子供であっても,場合によっては嫡出推定が及ばない形での処理が可能になっているということなのかなと理解し…

(PDF p.34)

第8回の特徴

第8回では、嫡出推定制度の二読審議として、これまで積み重ねてきた議論を踏まえ、具体的な条文イメージに即した検討が本格化しました。婚姻中の出生を基準とする新たな父性推定や、離婚後300日以内に出生した子に関する新たな推定規律など、無戸籍問題の解消を意識した制度設計について詳細な議論が行われました。

また、委員からは制度の方向性には概ね賛同が示された一方で、「推定」の法的意味や判例法理との関係、出生届の位置付け、救済制度との連携など、実務運用を見据えた多くの論点が提起されました。制度をより分かりやすく、かつ子どもの利益を最大限確保するための具体的な制度設計が議論された点が、第8回の大きな特徴となりました。

一次資料

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