配偶者からの暴力(DV)に関する法令・制度・公的統計・審議会資料などを、一次資料の読む順番(5ステップ)で整理します。運営の意見表明ではありません。
← 総合ガイド「家裁のいま」へ戻る / 自己表明 / 令和6年国会 / 調査・統計(暴力理由・保護命令) / 隣接:親子交流 / 隣接:共同親権
1. 現象 — 公的調査・統計で見えること
家裁の親権・面会交流の議論ではDV・虐待がしばしば言及されます。公的調査で確認できる範囲を、まず数値で置きます。
- 全国ひとり親世帯等調査:面会交流の取り決め/実施をしていない理由のうち、暴力・虐待・問題行動を挙げた割合(母子 3.8%/3.3% など)— 対照表
- 保護命令事件(地裁):令和5年終局 1,455件、うち認容 1,165件 — 処理状況
- (今後追記)配偶者暴力相談支援センターへの相談件数、警察の配偶者暴力事案の相談等件数など、白書・警察庁資料で確認できる指標
→ 調査・統計(現状と推移) / 理解ガイド第1段
2. 条文・通達・運用
三手続の区別:保護命令/支援措置/家裁認定 / 支援措置の公式・国会:索引(総務省・令和6年1月30日付通知/meeting-05・13・15)
この段は、DV・保護命令・改正民法まわりの規範と公式解説への入口です。条文の解釈や個別事案への当てはめは行いません。
A. DV防止法(配偶者暴力防止法)
正式名称は「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」(平成13年法律第31号)です。保護命令の要件・種類・手続は第四章に置かれています。
- 条文正本(e-Gov):法律全文 / 第四章 保護命令
- 第10条(接近禁止命令等)・第10条の2(退去等命令)・第12条(申立て)
- 第29条(保護命令違反の罰則)・第31条(虚偽記載のある申立書による申立ての過料)
- 当サイト法令ページ:DV防止法
B. 保護命令の公式説明(内閣府・裁判所)
条文を読む前の地図として、所管・手続の公式説明を置きます。保護命令は地方裁判所の手続です(家裁の親権・面会交流事件とは別)。
- 内閣府男女共同参画局:配偶者暴力防止法(概要)
- 同:保護命令(6類型・要件・申立て方法。令和5年改正による脅迫・心身危害の拡大にも言及)
- 裁判所:保護命令(DV事件)
- 件数の推移:調査・統計|保護命令事件の処理状況
C. 改正民法におけるDV・虐待(親権)
令和6年法律第33号(令和8年4月1日施行)により、離婚後の共同親権が導入されました。法務省・裁判所の公式説明では、虐待のおそれやDVのおそれ等により共同して親権を行うことが困難な場合などには、家庭裁判所が必ず単独親権の定めをするとされています。身体的暴力に限定されない旨も公式資料に記載があります。
- 法務省:改正法の解説 / Q&A(民法編)
- 裁判所:離婚後の親権者の定めに関する手続等
- e-Gov:民法(改正反映後)
- 当サイト:民法等改正(令和6年法律第33号) / テーマ:共同親権
この段で置かないこと:個別の申立ての要否・勝敗の見立て、「虚偽DV」の有無の断定。第31条の過料規定があることと、過料件数・虚偽主張の全国発生率は別問題です(後者は公的統計で十分に確認できていません → 第5段)。
→ 法令一覧
3. 経緯(立法・審議会・白書)
この段は、いつ・どの場で何が決まったかを年表で追う入口です。評価や因果の断定はしません。詳細は年表CPT・法令ページ・一次資料へ進んでください。
読む順番(骨格)
- 男女共同参画社会基本法・基本計画における「女性に対する暴力」の位置づけ
- DV防止法の制定と保護命令の拡充(第一次〜第五次改正)
- 法制審(親子法制/家族法制)におけるDV・虐待の議論
- 令和4年民法等改正(懲戒権規定の削除等)の国会審議・成立
- 令和6年民法等改正(共同親権と単独親権事由)・施行
転換点一覧(公的資料で確認できる日付)
| 日付 | 出来事 | 主な内容(要約) | 出典・リンク |
|---|---|---|---|
| 1999-06-23 | 男女共同参画社会基本法 公布 | 平成11年法律第78号 | e-Gov |
| 2001-04-13 | DV防止法 公布 | 平成13年法律第31号(議員立法)。同年10月13日施行(一部は翌年4月1日) | 法令 / e-Gov |
| 2004-12-02 | 第一次改正 施行 | 保護命令の拡充(子への接近禁止命令等)。平成16年法律第64号 | 内閣府概要パンフ等 |
| 2008-01-11 | 第二次改正 施行 | 電話等禁止、親族等への接近禁止、市町村基本計画の努力義務など。平成19年法律第113号 | 同上 |
| 2014-01-03 | 第三次改正 施行 | 生活の本拠を共にする交際相手への準用。法律名に「等」を追加 | 内閣府:H25改正 |
| 2019-07-29 | 親子法制部会 第1回 | 離婚後の子の養育に関する法制見直しの審議開始 | 議事録(資料) |
| 2022-10-14 | 民法等改正案を国会提出(R4) | 第210回国会・閣法12。懲戒権・嫡出推定等 | 年表 / 法令 |
| 2022-12-10 | 令和4年法律第102号 成立 | 衆・参法務委・本会議で審議。会議録は法令索引経由 | 年表 / 法令索引 |
| 2022-12-16 | 同法 公布(懲戒権等施行) | 懲戒権規定の削除等は公布日施行 | 年表 / 法務省 |
| 2023-05-19 | 第四次改正 公布 | 令和5年法律第30号。申立て・発令要件の拡大、期間伸長、厳罰化など(原則2024-04-01施行) | 概要PDF |
| 2024-04-01 | 第四次改正 施行 | 保護命令制度の拡充等が施行(一部規定を除く) | 法令 |
| 2024-04-01 | 令和4年法・嫡出推定等 施行 | 法律第102号のうち嫡出推定等(懲戒権等は既に2022-12-16施行) | 年表 / 法令 |
| 2024-05-17 | 民法等改正法 成立 | 令和6年法律第33号(共同親権等)。同年5月24日公布 | 法令 / 法務省 |
| 2025-12-10/30 | 第五次改正 公布/施行 | 令和7年法律第84号。紛失防止タグ等による位置情報の無承諾取得等を禁止行為に追加 | 内閣府:R7改正 |
| 2026-04-01 | 改正民法等 施行 | 共同親権制度開始。DV・虐待のおそれ等と単独親権の関係は公式解説を参照 | テーマ:共同親権 |
第四次改正(令和5年)で何が変わったか(公式概要の範囲)
内閣府「令和5年法律第30号(概要)」によると、主な点は次のとおりです(要約。詳細はPDF原文)。
- 接近禁止命令等の申立て対象に、「自由・名誉・財産」に対する加害の告知による脅迫を受けた者を追加。発令要件を「心身に重大な危害を受けるおそれが大きいとき」に拡大
- 接近禁止命令等の期間を6か月から1年に伸長
- 子への電話等禁止命令の創設、退去等命令の期間特例、保護命令違反の厳罰化(2年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金)など
- 基本方針・都道府県基本計画の記載事項拡充、協議会の法定化
→ 第2段(条文・保護命令) / 調査・統計(保護命令件数)
令和4年改正の国会論議(懲戒権等)
親子法制部会の成果は、令和4年法律第102号として国会で成立しました(懲戒権規定の削除・嫡出推定の見直し等)。共同親権(令和6年法律第33号)とは別改正です。会議録の一次データは国会会議録検索システム上にあり、審議経過の入口は日本法令索引です。
親子法制・民法改正との接続
DV防止法(地裁・保護命令)と、民法上の親権・監護・親子交流(家裁)は手続が異なります。一方で、法制審の親子法制部会や改正民法の公式解説では、DV・虐待のおそれが親権者の定め(単独親権)や運用の論点として繰り返し登場します。議事録・中間試案は資料CPT、転換点はサイト年表にあります。
- 資料一覧(親子法制部会の議事録・中間試案など)
- 年表(本テーマ関連のイベントを含む)
- 民法等改正(令和6年法律第33号) / テーマ:共同親権
この段で置かないこと:改正の是非、制度が「厳しすぎる/緩すぎる」といった評価、家裁実務における虚偽主張の増減の断定。白書・司法統計の数値は第1段・調査・統計へ。
4. 人物・団体の公式主張
この段は、誰が公式に何を掲げ/提出してきたかを、公式自己規定の短い引用と一次資料リンクで束ねる入口です。運営による評価ラベル(例:「親○○派」)は付けません。力関係の断定もしません。
読む順番
- 制度を所管・説明する省庁・裁判所の公式ページ(自己規定と手続説明)
- 意見書・声明を出している団体の公式文書(タイトル・日付で索引)
- 審議会委員等の人物マスタ(名簿時点の氏名・立場・肩書)
省庁・裁判所(公式自己規定・手続)
- 内閣府男女共同参画局 — 「女性に対する暴力の根絶」政策、DV防止法・保護命令・白書の公開
- 法務省 — 民法等改正の公式解説・Q&A(DV・虐待と単独親権の説明を含む)
- 裁判所 — 保護命令(地裁)・親権者の定め(家裁)の手続説明
団体の意見書・声明(索引)
以下は日弁連が公式に公開している文書への入口です。主張の要約・賛否は書きません。必要なら原文を読んでください。
- 日本弁護士連合会(日弁連)
- 2003-09-05:DV防止法の見直しに関する意見書
- 2020-10-20:DV防止法の改正を求める意見書
- 2024-02-16:家族法制の見直しに関する要綱についての会長声明
(今後)他団体の意見書・パブリックコメント提出物も、公式URLが確認できたものから同様に索引化します。
人物(審議会委員等)
法制審議会 民法(親子法制)部会の委員等名簿(令和4年1月11日現在)を原料に、名簿上の氏名・立場・肩書のみを人物ページ化しています。○印は名簿上「法制審議会委員」の表記です。各人物ページから、会議資料の編纂発言要旨(第1〜25回)へリンクしています。運営による評価ラベルは付けません。
- 一次資料:委員等名簿(当サイト) / 法務省PDF
- 一覧:人物一覧(各ページに部会発言リンク)
部会長
- 大村敦志 — 学習院大学法科大学院教授 ○
委員
- 磯谷文明 — 弁護士(東京弁護士会所属)
- 井上久美枝 — 日本労働組合総連合会総合政策推進局総合局長
- 大石眞 — 京都大学名誉教授 ○
- 小河原寧 — 東京家庭裁判所判事
- 金子修 — 法務省民事局長
- 岸本武史 — 内閣官房内閣審議官(子ども家庭局併任)児童虐待防止等総合対策室長
- 窪田充見 — 神戸大学大学院法学研究科教授
- 髙橋良 — 弁護士(神奈川県弁護士会所属)
- 棚村政行 — 早稲田大学教授
- 手嶋あさみ — 最高裁判所事務総局家庭局長
- 堂薗幹一郎 — 法務省大臣官房審議官
- 中田裕康 — 早稲田大学大学院法務研究科教授
- 水野紀子 — 白鷗大学教授
- 山根香織 — 主婦連合会常任幹事
- 山本恒雄 — 社会福祉法人恩賜財団母子愛育会愛育研究所客員研究員
幹事
- 石綿はる美 — 一橋大学法学研究科准教授
- 内野宗揮 — 法務省民事局民事法制管理官
- 衣斐瑞穂 — 内閣法制局参事官
- 大森啓子 — 弁護士(第二東京弁護士会所属)
- 垣内秀介 — 東京大学大学院法学政治学研究科教授
- 木村敦子 — 京都大学大学院法学研究科教授
- 木村匡彦 — 最高裁判所事務総局家庭局第二課長
- 久保野恵美子 — 東北大学大学院法学研究科教授
- 佐藤隆幸 — 法務省民事局参事官
- 土手敏行 — 法務省民事局民事第一課長
- 中野孝浩 — 厚生労働省子ども家庭局家庭福祉課長
- 幡野弘樹 — 立教大学教授
肩書は名簿記載時点です。異動・退任はこのページだけでは分かりません。
この段で置かないこと:団体・人物への支持/批判、影響力の断定、「どちらが正しいか」。読者が公式文言と提出資料から推察するための材料だけを置きます。
5. 残争点/資料上言えていないこと
保護命令・支援措置・家裁判断は別手続です。一方から他方を読み替えません → 手続の区別。「虚偽DV」発生率の公的統計は十分にありません。濫用指摘と避難阻害懸念はいずれも国会一次にあります(件数で優劣を付けません)。
この段は、資料上まだ言えないこと・定義が違うと読み替えられないことを明示する場所です。ここに運営の「正しい答え」は書きません。
統計で言えないこと(第1段・調査・統計との接続)
- ひとり親世帯調査の「暴力・虐待」「問題行動」は、回答者の自己申告による理由です。裁判所による事実認定率でも、「虚偽DV」の割合でもありません。
- 同調査には「その他」「不詳」が大きい項目があります。未回答・非選択の中身は分かりません。
- 「虚偽DV」の全国発生率・家裁での虚偽主張件数を示す公的統計は、現時点では確認できていません。
- 保護命令の却下・取下げ等を、虚偽主張の件数として読み替えることはできません(要件未充足・証拠不足・一部取下げ・移送等を含みます)。
- 家裁の親権・監護・面会交流事件で、DV主張がどれだけ出され、どう認定されたかの全国集計は、公的統計では十分に揃っていません。
→ 暴力・虐待を理由に挙げた割合 / 保護命令事件 / 読み方の注意
制度・手続で混同しやすいこと(第2段との接続)
- DV防止法の保護命令は地方裁判所の手続です。家裁の親権・面会交流事件とは母集団も手続も異なります。
- 第31条(虚偽記載のある申立書による過料)の規定があることと、過料件数・適用実態の全国統計が揃っていることは別問題です。
- 改正民法における「DVのおそれ」等と単独親権の関係は、法務省・裁判所の公式解説の範囲で追えますが、個別事案でどう認定されるかは資料だけでは予測できません。
→ 第2段(条文・運用) / DV防止法 / 民法等改正
経緯・アクターでまだ薄いこと(第3・4段との接続)
- 審議会・国会での個別発言の構造化(誰が何を何度言ったか)は、議事録パイプライン整備後に充実予定です。
- 国会議員など他カテゴリの人物マスタは未整備です。親子法制部会委員等(名簿PDF)は人物ページ化済みです。
- 日弁連以外の団体の意見書・パブリックコメントは、公式URLが確認できたものから順に索引化します(未収録が多い状態です)。
解釈が分かれうる点(運営は断定しない)
次のような問いは、資料・実務・当事者の経験によって見方が分かれます。当サイトはどちら側の結論も書きません。
- 保護命令・単独親権事由の制度設計が、被害者保護と手続保障のバランスとして十分かどうか
- 面会交流の未実施理由における「関わりたくない」「会いたがらない」と、DV・虐待の関係をどう読むか
- 家裁実務におけるDV主張の扱い(事実認定のあり方)について、公式統計が不足していること自体をどう評価するか
読者が一次資料(第1〜4段のリンク先)に戻り、自分で比較するための余白として置いています。
このテーマの読み終わり方
- 数値の限界を確認する → 調査・統計の注意
- 条文・手続に戻る → 第2段
- 総合ガイドの残争点と突き合わせる → 家裁のいま 第5段
- 利用上の限界 → 免責・ご利用について